第17話 忍び寄る影
学園祭まであと一週間——。
校内はすでに準備に追われ、普段とは違う活気に包まれていた。教室の掲示板には、各クラスの出し物の内容が書かれた紙が貼られ、生徒たちの熱気が伝わってくる。
「ハーブ、クラスの出し物、決まったぞ!」
坂井が意気揚々と近づいてきた。
「……何をやるんだ?」
「メイド喫茶 だ!」
「……は?」
ハーブは思わず聞き返した。
(メイド喫茶とは確か以前この世界に関する書物を読み漁ってた時に書いてあったな…女性が特殊な服を着てもてなすものだと…)
「メイド喫茶、だよ! ほら、最近の学園祭ってこういうの流行ってるじゃん? うちのクラスもやることになったんだ!」
「……なぜ、それになった?」
「投票の結果だ。女子たちはカフェ系をやりたかったみたいだし、男子は可愛いメイドを見たかった。で、全会一致ってわけよ!」
「なるほど……」
ハーブはやれやれとため息をついたが、雪奈と玲華の方を見ると、意外にも二人とも反対する様子はなかった。
「雪奈、お前は……メイド喫茶、大丈夫なのか?」
「えっと……少し恥ずかしいですけど、みんなでやるなら……」
雪奈は頬を染めながらも、小さく頷いた。
「玲華は?」
「別に。私は店の運営側に回るから」
玲華は腕を組んでさらりと言った。
「メイド服は?」
「着ない」
即答だった。
坂井が「うぅ……」と悔しそうな声を漏らすが、玲華はまるで気にしていなかった。
「ハーブ、お前もメイド服着るか?」
「……お前は俺を殴らせたいのか?」
「冗談だよ! まぁ、男子は給仕役だからな。お揃いの制服になるらしいぜ」
「……面倒だな」
ハーブは肩をすくめた。
玲華と雪奈が並んで準備の話を進める中、ふと、玲華の方がハーブをちらりと見た。
「……」
(あの時、私のことを心配してくれた)
黒鋼会の刺客に襲われた後、ハーブは意外なほど真剣に自分の傷を気にしていた。
あれから数日経ったが、その出来事がなぜか頭から離れない。
(何を考えてるの、私……)
玲華は自分の気持ちを振り払うように、強くノートを閉じた。
黒鋼会の動き
一方、学園の外——。
黒鋼会のアジトでは、時雨の報告が終わったばかりだった。
「……ハーブは、確かに只者ではありませんでした」
時雨が静かに語ると、そこにいた幹部たちがざわめいた。
「やはり……か」
その中の一人、白髪の男がニヤリと笑う。
「俺たちのターゲットが、ただの学園生なわけがないよな」
「どうする? 次の一手を打つか?」
「いや——まずは内部の裏切り者 を炙り出すのが先だ」
時雨が目を細める。
「黒鋼会の中に、こちらの情報を外に流している者がいる」
ハーブたちの動きが、妙に筒抜けだった。
学園祭の準備中という“隙”を突くチャンスを得た今、慎重に計画を練る必要があった。
「次に動くのは、“奴” か……」
時雨は密かに思案する。
(ハーブ、お前がどこまで抗えるか……見せてもらうぜ)
次回予告
学園祭の準備が進む中、ハーブたちのクラスにトラブル発生!?
さらに、黒鋼会の裏切り者の影が浮かび上がる——!?
次回、第18話「疑惑の影」
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