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第16話 刺客・時雨との激突

屋上に響く風の音に紛れ、時雨の殺気が研ぎ澄まされる。


——速い。


時雨の姿が瞬間的に消え、次の瞬間にはハーブの背後に現れていた。


「——ッ!」


直感的に身を低くし、紙一重で回避する。時雨の手刀が風を切り裂き、かすかにハーブの頬をかすめた。


(この速度……こいつ、只者じゃないな)


ハーブは即座に体勢を整え、距離を取る。しかし——


「遅い」


時雨は既に正面に回り込んでいた。


目にも留まらぬ速度で拳が繰り出される。


ハーブはそれを最小限の動きで受け流しながら、反撃の一撃を繰り出した。


だが——


「——フッ」


時雨はわずかに上体をそらし、ギリギリでかわすと、逆にハーブの腹部に拳を叩き込んだ。


「……っ!」


鋭い衝撃が体を駆け抜ける。


(普通の殴り合いじゃない……こいつ、武術を極めている!)


異世界の剣技を駆使するハーブに対し、時雨の動きにはまるで無駄がない。


「その程度か? 俺はもっと楽しめる相手だと期待していたんだが」


時雨が挑発的に微笑む。


ハーブは軽く息を吐くと、鋭く目を細めた。


「なるほどな……なら、少し本気を出すか」


次の瞬間——


——ヒュッ!


ハーブが地面を蹴り、瞬時に時雨との距離を詰めた。


「ッ!?」


今度は時雨が驚愕する番だった。


(この速さ……いや、それ以上に動きが読めない!?)


時雨が防御の構えを取る前に、ハーブの拳が正確に彼の肩を捉え——


——ドンッ!!!


衝撃とともに時雨の身体が吹き飛ばされる。


数メートル後方で何とか体勢を立て直した時雨は、腕を軽く振ると苦笑した。


「……ククッ、面白い」


目の奥に、獣のような好奇心が宿る。


「ここまでやるとはな。確かに、お前はただの学園生じゃない」


「……それで、戦う理由はこれで十分か?」


ハーブが静かに尋ねると、時雨は肩をすくめた。


「俺の任務は、お前の実力を確かめること。そして、もう一つ——」


時雨はポケットから小さなメモを取り出し、ハーブに放り投げた。


「“黒鋼会の裏にいる本当の敵”についての情報だ。お前が思っている以上に、事態は厄介な方向に進んでいる」


ハーブはメモを受け取り、視線を戻す。


「お前は……敵じゃないのか?」


「俺は黒鋼会の人間だが、あの組織のやり方が気に食わないだけさ。もし次に会う時が来たら、その時は……どうなるか分からないがな」


そう言い残し、時雨は屋上のフェンスを軽やかに飛び越え、姿を消した。


——不思議な男だった。


だが、確かに分かったことがある。


(黒鋼会は、ただの不良集団じゃない……もっと大きな何かが背後にいる)


手の中のメモを握りしめ、ハーブは屋上からの景色を見下ろした。


穏やかな学園の風景の下に、暗い影が確かに蠢いている——。

読んでくださりありがとうございます!


更新頻度ですがなるべく毎日11時頃と22時頃の2話投稿を目指します!


感想など書いていただくと今後の励みになるのでどんどんコメントしてください!

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