第13話 迫る黒鋼会の刺客
玲華の屋敷での襲撃を退けた翌日、学園は平穏を取り戻していたかのように見えた。しかし、ハーブは警戒を緩めるつもりはなかった。黒鋼会がこのまま黙っているはずがない。
朝の教室——。
「おはようございます、ハーブさん」
雪奈が席に着きながら、いつものように微笑む。
「おはよう、雪奈」
玲華も教室に入ってくるが、どこか疲れた様子だった。
「おい、玲華。顔色が悪いぞ」
「……別に。ただ、少し寝不足なだけよ」
玲華は目を伏せたが、昨日の戦闘の影響は少なからず残っているようだった。ハーブはふと、彼女の腕に巻かれた包帯に気づく。
「お前……傷が残ってるのか」
「こんなの、ただのかすり傷よ。大したことないわ」
玲華は気丈に振る舞おうとするが、ハーブはため息をついた。
「無理するな。ちゃんと手当はしてるんだろうな?」
「……当然よ」
玲華は少し頬を染めながら視線を逸らした。
(心配してくれてる……?)
彼の気遣いが思いのほか嬉しくて、玲華は自分の鼓動がわずかに早まるのを感じた。
昼休み——。
ハーブは購買でパンを買った後、中庭で昼食を取ることにした。
「お、ハーブじゃん!一緒に食おうぜ」
クラスメイトの男子が声をかけてくる。彼は学園でも陽気な性格で知られる佐久間だった。
「構わないが、いいのか? 他の連中と食べなくて」
「いいんだよ、たまにはな! あ、玲華もいるじゃん」
玲華は少し驚いたような顔をしたが、ため息をついて座った。
「……ハーブと食べるのはいいけど、あんたまでついてくるとはね」
「そんな冷たくすんなって。お前ら、最近よく一緒にいるけど、付き合ってんのか?」
玲華がパンを喉に詰まらせそうになり、ハーブは即座に否定した。
「違う」
「ち、違うわよ! なんでそうなるのよ!」
「いやー、なんか雰囲気がな。ま、仲がいいならいいことだ」
佐久間は楽しげに笑い、玲華は少し落ち着きを取り戻す。
(……別に、嫌じゃないけど)
玲華はハーブの横顔を盗み見ながら、小さくため息をついた。
放課後、帰り道——。
玲華は屋敷に帰る前に、ある人物と会っていた。
「例の件はどうなった?」
「……黒鋼会の動きが活発化している。おそらく、次は本格的な刺客を送り込むだろう」
玲華の父の部下であり、情報収集のプロである男が低く答えた。
「刺客……?」
「こちらの動きを監視している者がいる。さらに、黒鋼会内部でも一部の者が不穏な動きを見せているようだ」
玲華は眉をひそめた。
(黒鋼会の中に、裏切り者がいる……?)
「詳しく調べてちょうだい。私たちの命に関わる問題よ」
「承知した」
玲華は不安を抱えながらも、次に備えるしかないと覚悟を決めた。
その夜——。
黒鋼会のアジトでは、一人の男が静かにナイフを研いでいた。
「ターゲットは、玲華・フォン・ヴァイスハイト……そして、ハーブか」
彼の名は「影蛇」と呼ばれる刺客。黒鋼会でもトップクラスの実力者であり、その暗殺術は誰もが恐れるものだった。
「ふふ……楽しませてもらうぜ」
闇の中で、不気味な笑みが浮かび上がった。
次回、第14話「影蛇の罠」
黒鋼会が送り込んだ最強の刺客——影蛇が、ついにハーブたちの前に現れる!
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