ゼントロン王国の国境の街ディスロイドに到着して同伴者となるパーティー・ウインドと出会う。
この作品を選んで、お読で頂き、ありがとうございます。
この物語はフェイクションです。
物語中の世界観は独自の世界観で書いておりますので、法律、慣習、習慣、常識等に異質な部分が多々ありますが、其れ含めて楽しんで読んで頂きたいと思います。
イリヤがアマリアとして追放されて二週間が経過して、国境の街ディロイドへ向かう定期便の馬車の中でセイラスアン王国の噂を耳にすることになった。
その噂はやはりアマリアは大聖女に任命されていて、大聖女となったアマリアを隣国のバカ王子が難癖付けて婚約破棄した挙句国外追放した事で大騒ぎになっているとの事であった。
イリヤは大聖女になっていたら大変だったなと思いながら、追放してくれたケイナスに感謝しつついい気味だと思いつも、ただシリュウス殿下とメイテリアの二人の事は気になっている。
日暮れ前に国境の街ディロイドに到着して、馬車から降りて街の中を宿屋を探して歩いていると、街のあちらこちらで大聖女アマリア様が国外追放されて行方知れずになっていると云う噂話が聞えて来た。
イリヤはその時に噂話と云うのは伝播するのが早いだなと感心しつつ今となっては他人事だと思い、宿屋を見つけて中に入り部屋が空いているか女将に聞いた。
「あの部屋は空いてますか、一泊したいのですが」
「はい、いらっしゃい、空いてますよ、一泊ご利用ですね」
「はい、そうです。できれば夕飯と朝食の二食もお願いしたいですけど、あとお弁当も用意出来ればお願いしたいですけど」
「一応お弁当もできるけど、パンに干し肉を挟んだ簡単なものを二つで良ければですけど」
「あぁ、それで構いません馬車の中で食べるので」
「そうですか、冒険者の方なのね、え~と全部で12850ルディ前金で支払いお願いします」
「はい、冒険者証の口座から支払いできますか」
「はいできますよ、では預かりますね、イリヤさんね、少々お待ちくださいね」
女将は精算用の魔道具で宿代の会計の精算処理を行う。
「はい、冒険者証と明細書と鍵ね。部屋は203号室ね、直ぐに食事をするなら空いているテーブルに座って待っていてね」
「はい、では直ぐに夕飯を食べたいので、あそこのテーブルに座って待ちますね」
イリヤは直ぐに夕飯が食べたかったので空いていたテーブルに座った。
イリヤが空いていたテーブルに座り夕飯の料理が持って来るまで待っていると、他にも泊り客が数人いてやはり大聖女に任命されたアマリア様が行方知れずになっていると云う噂話が聞えて来た。
「はい、お待ちどうさま、あんたも聞いたかい、100年ぶりに大聖女に任命された聖女様が国外追放されて行方知れずだと云う噂を」
「はい、街中がその噂話で持ち切りでしたね」
「まったくね、瘴気も浄化できて結界もちゃんとしたものを張れる聖女なんてそうは居ないのにね、バカな王子も居たんもんだよ、この国の聖女ですら瘴気の浄化は出来ないし結界もたいしたものは張れないけど無いよりマシ程度だよ」
「アハハ、そうですか、まぁ、それが当たり前になるとその存在の大切さが分からなくなるのでしょうね」
「そうかね、ただね、大聖女様だったら瘴気が発生したら教会に頼めばすぐに浄化してくれる事を期待したんだけど、残念だわ、それじゃ、ごゆっくりどうぞ」
「はい、それでは頂きますね」
イリヤは先ずはスープを一口飲んでから食事を始める。
女将さんの話は本当で大聖女になったら聖セイランス教会の本部でもあるセイスランス聖国の大聖教様の管理の元へ置かれて、信仰する国々から瘴気の発生があったら浄化に当たる使命を受ける事になる。
当然そうなるとケイナス殿下との婚約は解消されるのにわざわざ難癖をつけて婚約破棄して国外追放したのであり、ケイナス殿下は本気で平民の孤児であるアマリアが大聖女になるはずか無いと思い込んでいたのだと思った。
ケイナス殿下もそうだけど神官補佐のディボスも本気で平民の孤児であるアマリアが大聖女に任命されるはずか無いと勝手に思い込み、アマリアに難癖を付けて婚約破棄して国外追放するのに加担したのである。
大聖女を輩出した国には聖セイランス教会本部から名誉国として褒美を受け、信仰する国々からも交易でかなりの安い値段で物資が購入できる特権も与えられる。
国王ゼイランド様は名誉と特権が一気に吹き飛び逆に信仰する国々から避難を浴びて交易品も値が上がる事が免れない事態となり、さぞやお怒りの事だと察する。
逆に言えば大聖女アマリアを見つけた国には名誉国のチャンスが巡る事になり、これから各国で大聖女アマリアの捜索が始まる事は容易に想像できる。
なのでイリヤとしてはあまり目立つ行動は控えて、これからの行動に注意して旅を続けなければならないと肝に銘じながら料理を食べていた。
「ふぅ~、ヤレヤレね、今日は大した魔物は居なかったわね、でも明日にはここをを発たないとね」
「そうね、早くボソワンド王国で発見されたダンジョンにも挑みたいものね」
二人の冒険者の女性は疲れ待った表情で会話しながら空いているテーブルに座る。
「あぁ、女将さん夕飯二人分お願いね」
「はいよ、今持って行くよ」
女将さんが元気な声で答える。
「しかし、街中大聖女の噂で持ち切りね、特徴が15歳で金髪の美少女というだけで探し出すのは大変よね、金髪なんて一般の女性にもそこそこは居るものね」
「そうね、顔も分からないのに各国で探すみたいよ、冒険者ギルドの掲示板にも依頼票がもう貼ってあったものね」
「そうかい、お待ちどう、冒険者ギルドにも依頼票が貼ってあったのね、もう必死だね」
「まぁ、100年ぶりなんでしょう、大聖女の誕生が必死になるのも分かるけどね、本人を見つけたら100万ルディの報酬が貰えるみたいね」
「そこそこの報酬だけど、私達はボソワンド王国のダンジョンの方が興味があるわね、探す手間も掛からないしね、ただ定住して稼ぐだけよ」
「あの、私も一緒にボソワンド王国に行きたいのですが、同行しても構いませんか」
イリヤはいい旅の友が居ると思い声を掛けた。
「あら、貴女もボソワンド王国に行きたいのかしら、ダンジョンに挑みたいの、結構若いわよね」
「はい、イリヤと申します。私も挑みたいです」
イリヤはマジックポーチ擬きから冒険者証を出して、二人の座るテーブルの上の料理の間に置いて見せる。
「へぇ、15歳でCランクで魔法剣士ね、ヘェ~氷属性の魔法が得意なのね」
「氷属性なんて稀よね、成る程ねそれでCランクまでその若さでなれたのね、氷なんか簡単に出せるの」
「はい、こんな感じですか」
イリヤは無詠唱で掌の上に拳くらいの大きさの氷の塊を出した。
「凄いわね、ちかも無詠唱でね、いいわよ、私達と一緒に行きましょうか、私達はパーティー・ウインドのリーダーのリンカよ」
「私はリンカ姉さんの妹のレンカね、私達姉妹は風属性の魔法が得意なのよ」
「そうだね、風と氷なんて天下無敵の組合せじゃないの、水属性も使えるの」
「はい、あっ、でも今は出せませんね、器が無いですからね」
「うふふ、確かにね、私達の料理が水浸しになられても困るものね」
リーダーのリンカが笑いながら言う。
「チョッと、イリヤさん、家の冷蔵庫の魔晶石見てくれない、最近まったく冷えなくなって困っているの、もし直ったら1万ルディ支払うわ」
「う~ん、そうですか、元に戻せるか分からないですよ、やった事がないですから」
「いいわよ、直ったらの話だから、さぁさぁ、こっちに来て」
女将はイリヤを厨房の中にある冷蔵庫のある場所へ腕を掴んで連れて行く。
冷蔵庫のある場所へ着くと直ぐに下の方にある引出しを引いて魔晶石が填められているが見えたので、イリヤが魔晶石に触れると魔力がかなり無くなっていたのが分かった。
「あ~、ほとんど魔力が無くなっていますね、魔力を補充してもいいですけど割れる危険性もありますよ、かなり古くなってますし交換した方が良いです。補充しても直ぐに消費されてしまいますけど」
「う~ん、やっぱりそうかい、いいわよ、魔晶石が割れてもいいから補充してくれるかしら、これでダメなら交換するわ」
「分かりました。では補充してみますね」
イリヤは魔晶石に氷属性の魔力を補充を始めて、8割程度でまで補充をして割れそうになったので止めた。
「う~ん、これくらいが限界かな、これで試して貰えますか」
「いいわよ、・・・・うん、冷えて来ているわ、ありがとう」
「いいえ、8割程度ですからね、それ以上はチョッと割れそうなので止めました」
「そうかい、でも助かったわ、チョッと待てってね、・・・はい約束の1万ルディね」
「あっ、ありがとう、路銀の足しになって助かります」
「うふふ、それは良かったわ、お互い様と云う事でね」
女将も笑顔でお代をくれたので、イリヤもお礼を言ってから二人の元へ戻る。
イリヤがパーティー・ウインドの二人の元へ行くと、明日の予定を確認し合い一緒に隣国のサキュリア王国の国境の街の一つ先の街ウレイタン行きの定期便馬車に乗っていくことになった。
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