国道の亡霊
創作ではありません! 三重県で同じような体験をした方はおられませんか?
天気の良い午後、山間部の国道を社用車で走る私が体験したお話です。
それは約25年前 三重県のお客さんへの訪問の帰りの話。
ナビゲーションのない時代です。
車での帰り道、私はいつもと少し違う道を走っていることに気が付きました。
しかし標高が高く天気も良い。山々がきれいに見える。いい景色だ。
道路横のガードレール。これを突き破ったら必ず死ぬような絶壁。
イニシャルDでダブルのガードレールでの事故は必ず死ぬという説明を思い出しながら 関西ローカル 毎日放送のなにはなくとも野村啓司ですを聴きながら走行していました。
角淳一さんはいつ復帰するんだろうか 放送前にディレクターと口論となり帰ってしまい唐突に番組終了となったやしきたかじんのラジオ復帰はもうないのだろうか?と考えたその時、ギャービビーッと雑音が入り始めました。
電波の入りが悪いのかなーと思っていましたが、雑音の音量はボリュームも上げていないのにどんどん大きくなっていきます。
そのうち「ギー ギャギャー オオーグオウオオー ああああーーっ」と雑音が止みません。そしてだんだん人の叫び声のようにも聞こえます。
「あああああー うおあああーーっ!」いう音は何者かの叫び声のようです。
えらく人の声のような雑音だなーと思っていると
なんと、音源の位置が移動したのです。
その音は前から後ろに徐々に徐々に移動します。 す ステレオ!?
会社の車なので安いラジオです。 スピーカーも一器しかついていないので完全なモノラルです。
以前に分解したのでわかっています。
私の混乱をよそに音源はさらに移動します。運転シートの左のひじ掛け付近 車内の中央部に移動しました。
私は叫びました! 「ドルビーサラウンド!?」
さらに音源は移動します。とうとう後部座席にまで移動しました。
「あああああー うおあああーーっ」ともちろん叫び続けています。
そのまま移動して車から出ていくかと思いきや ずっと後部座席の中央にいるのです。
非常に気になります。
後ろを振り向いて見てみたい!
振り向いたとたんに私は絶叫を上げて ハンドルを切り損ね 断崖絶壁をダイブすることになるだろうと想像はつきます。
しかし、見てみたい!
バックミラーならいけるんじゃないか?
10秒ほど考えてから・・・ ちらっと見てみました。
いません。
もう一度ちらっと見てみました。
いません。
今度は5秒ほど見てみます。
いません。
なあんだと言って後ろを振り向く! ということはしません!
それだけはしてはいけないとなぜか確信がありました。
そこからは私と亡霊との根競べ
「あああああー うおあああーーっ」と叫ぶ亡霊。
振り向いてたまるかと絶叫に我慢して運転する私。このガードレールを飛び越えたら死んでしまう!
車線にだけは気をつけて走りました。
5分ほど続いたでしょうか?
その音はまた 前へ移動を始めました。
中央へそして元のラジオの位置へ。
いつの間にか 叫び声も普通の雑音に変わり そしてラジオパーソナリティー野村啓司の声に変わりました。
終わった・・・と思った時にガードレール横の看板が見えました。
わき見注意! 転落事故多し!との文字。
「そういう落ちかーい!!」と私は叫びました。
きっとつい、振り向いてしまって崖から転落した車があるのでしょう。
今になって考えてみると かなり怖い状況のはずが 全く恐怖を感じなかったのは、亡霊勝負に負けてそこで転落死してしまった人が助けてくれたのかもしれません。
守雨さんの作品「これ実話なんだけど」を読んで昔の体験を思い出して投稿してみました