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第99話 感謝を

「フレイム!!」


 一発撃ったところで、何の問題もない。


 日々の鍛錬だけでなく、先日は相当な数を撃ったのだ。これで熟練度が上がってないなんてあり得ない。俺は二日前より確実にフレイムを極めていることだろう。


 いつもの通り、視界が真っ赤に染まった。けれど、もう既に驚くことはない。眼前に燃え広がる純白の炎に深紅の炎が混じり合っただけだ。


 すると、どういうわけか、炎は打ち消し合っていた。フレイムの効果範囲にあった白い炎が鎮火していたのだ。


「おおお! 白き炎が消えたぞ!」


 王様が手を叩いて喜んでいる。別に見世物にしようとは考えていなかったけれど、結果的に拍手が巻き起こっていた。


「どうやら白き炎は高温を保たなくては維持されんようじゃな?」


「いや、でもガラムの水魔法では消えなかったぞ!?」


 俺は記憶を掘り返している。

 帰り際にガラムは消火を試みたのだ。しかし、結果は一瞬だけ勢いを弱めただけであった。


「水は水蒸気になる。恐らく、熱された空気を生んだだけじゃな。超高熱の炎を消すには低温の炎が適切なのかもしれん」


 確かに水は蒸発する。ガラムが言うには水魔法は熱を籠もらせただけのよう。


「リオ、明日から街道沿いにフレイムをかけていけ。自然に鎮火させるより早いのなら、そうすべきだ」


 罰を与えられようとしていた白い炎。ガラムはその鎮火を担当するように言った。


「分かった。俺のせいだしな……」


 北街道が通れないのなら、行商人や移動する人たちが困る。

 俺に消化能力があるのなら、街道沿いだけでも何とかしなければならない。


「ふはは、別にリオのせいにはせぬぞ? 儂からも願おう。リオよ、この街道を通行可能にしてくれ。褒美は別に用意させてもらう」


 王様も乗り気みたいだし、元より俺はやるつもりだ。


 仕方なかったとはいえ、原因は俺だからな。あとでブツクサ言われる恐れがあるのなら、俺は進んで消化に当たらせてもらおう。


「しかしガラムよ、リオは想像を絶する魔法士だな? このような人材に断罪処分を口にしたマルコスは追って処罰することにしよう」


 ガラムは何も口にしなかったが、してやったりの表情だ。

 俺としても肝が冷えたのだし、二度と口出ししてこない程度に罰してやって欲しい。


「王陛下、ワシはリオを大きく育てたいのです。魔道士団に縛り付けることなく。彼は女神エルシリア様に愛されております。きっと王国だけでなく、この世界を救う役目を担うはずです。束縛は好ましいものではありません。ある程度の自由をお与えください」


 ガラムは俺の代弁をしてくれる。

 恐らく俺が鍛冶職人を続けたいという話だ。魔法の威力を理解した王様に俺が拘束されないために。


 マジで頼りになる。実父とは大違いだな。血の繋がりはなかったけれど、この数日だけでも実の父を超えた愛情を受け取っていた。


「うむ、大きく育てよ。儂はそれを期待しておる。王国に留まらず、世界に打って出られる若者を拘束するつもりはないぞ」


 王様もまた人格者だと思えた。

 普通であれば王国の財産として扱うはず。自意識過剰かもしれないが、俺を縛り付けても不思議ではなかったというのに。


「王様、感謝いたします。俺は必ず期待に応えて見せますので」


 俺に言えることはこれくらいだ。

 勇者だとか救世主だとか具体的な目標なんて口にできない。俺は一歩ずつ成長していこうと思う。


 更にはガラムの方を向く。

 此度は本当に感謝してもしきれない。辺境伯の養子になったことは俺の人生を大きく変貌させたことだろう。


 だから、俺は端的でありながらも感謝を述べている。

 溢れる感情に従ったまま。


「父上にも感謝を――」


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