第95話 お披露目
「火災の原因はリオ・ウェイルであると思われます」
えっと。何だそれ?
聞き慣れない名字は仕方ないとして、原因ってどういうつもりだよ?
「マルコス大臣、待ってくだされ! リオはスタンピードを止めたのですぞ!?」
ガラムが大臣に反駁を加えてくれる。
いいぞ、もっと言ってやってくれ。無礼な大臣を逆に懲らしめて欲しい。
「失礼ですが辺境伯、私の手元に上がってきた資料によると、スタンピードは一万規模。それは王都の兵を総動員すれば何とかなったはず。北の街道が通行不能になるような事態にはならなかったのです」
「十万以上だと訂正したじゃろうが!? ワシは一度王都へ補給に戻っておる! 全てを伝えたはずじゃ!」
「それこそ工作の疑いがありますね。既に火災が発生しておったのでは? 誤魔化すために斥候の情報が誤っていたと伝えた。ご子息の不始末をもみ消すために……」
「なん……じゃとう?」
これはヤバいかもしれない。
大臣はハナから俺を信じていないのだ。何を言っても無駄であり、現実として燃え続ける火災しか証拠がなかったんだ。
「証人ならおるわ! メイフィールド伯爵家のご令嬢が一部始終を見ておる!」
「成人したばかりの小娘でしょう? 幾ら金を渡したというのです?」
無駄だろうな。大臣の憶測は現状を最も容易に飲み込めるものだ。
俺が火災を起こし、それを誤魔化すためガラムが適当な話をしていると。証人が少ないのは俺たちに不利であり、大臣の推測に有利だといえた。
「王陛下、ワシは断じて嘘など申しておりませぬ。もしもリオを罰するというのであれば、ワシを罰してくだされ。リオはエルシリア様の申し子。世界が彼を失ってはなりませぬ」
「ガラム、やめてくれ。もういい。俺のせいにしたら良いんだ。どうせ俺は元々男爵家の五男坊。英雄になる器じゃない」
「リオ!?」
世話になったガラムに迷惑をかけるわけにはならない。
どうせ一ヶ月前は断頭台に乗せられる寸前だったんだ。一ヶ月も楽しい思いができただけマシってことだろう。
「ほう、なかなか正直でよろしい。陛下、彼も罪を認めているようです。罰を与えるべきかと……」
「むむぅ。マルコス、貴様は本気なのか?」
どうやら王様はまだマルコス大臣の話を信じたわけではないらしい。だけど、どうせ無駄なら期待させないでくれよ。
「当たり前です。北側の貿易路が絶たれたのです。鉱石や農産物、王都の暮らしに必要なものが手に入りません。断罪処分が適当かと……」
ほらな。マルコス大臣は誰かに罪を着せて、とりあえず事態の収拾に当たりたいと考えている。俺は最も適当な人材であったことだろう。
「王陛下、リオの魔法を見ていただきたい。話はそれからです」
ここでガラムが再び手を挙げた。
最後の足掻きというのだろうか。俺の魔法を見てもらいたいと進言している。
「見ると分かるのか? スタンピードの規模がどうであったか」
「リオのジョブはパラディン。伝記にある討魔の勇者と同じです。だというのに、扱う魔法はまるで原初の魔女ラプスの再来。どれだけ女神様に愛されているのか理解できるかと存じます」
まあ、そこしかないだろうな。
ガラムが主張するとすれば、俺が女神に愛されているかどうか。女神が選んだというのなら、下手な扱いをするべきではないのだと。
「ふむ、余は真相を知りたい。リオのジョブを調べ、尚且つ能力を見極めよう。明日までに準備をしておくように」
とりあえず、俺は即日の断罪を免れていた。かといって、一日延びただけかもしれないけど。
明日のお披露目に俺の人生はかかっているらしい。
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