第93話 なれたらしい
「リオ、勇者様になるのね!!」
そういや、エレナは勇者に憧れてるんだっけ。白馬に跨がり、世界を救うとかなんとか。
まだ決まったわけじゃないし、そもそもガラムが勝手に話しているだけ。つまるところ、エレナの希望に添うような事実はない。
「いや、エレナ……」
「勇者様になったのなら、デートに連れてって!」
「もちろんさ! 俺は勇者になるよ!」
前言撤回だ。
エルシリア様、どうか俺を勇者に。
エレナとデートしたいのです! そんでもって、イチャコラさせてくださいまし。
「嬉しい! 魔王とか悪魔王とか一刀両断にしちゃうんだ!」
「任せろ。俺は最強の勇者になってやるぜ!」
現金なものだが、エレナのためであるのなら、やむを得ない。
全ては彼女を手に入れるため。エレナのためならば、死ぬ気で戦えるんだ。勇者にだって俺はなれるはず。
「二人はお似合いのカップルですね?」
ここでテッドさんがそんな風に言った。
え? それって本気? もっと言ってやってくれない?
「ふはは、我が息子は調子乗りじゃの! まあよい。好色も英雄の嗜みじゃ。メイフィールド伯爵も勇者ならば首を縦に振るしかないじゃろうて!」
「おうよ! 早く勇者に昇格しないかなぁ!」
エレナを手に入れたのなら、俺の人生は大勝利といって過言ではない。
「しかし、とりあえず王都に戻るのじゃ。リオは王都を救った英雄じゃが、この炎が王都にまで来てしまえば、一転してテロリストじゃからな」
ここでガラムが脳内お花畑にいた俺を現実に呼び戻す。
え? やっぱ駄目なやつなの? 一面の白い炎は割と綺麗だけど……。
「テロリストは勘弁してくれよ。俺はもう牢獄になんぞ入りたくないし」
「それはワシも望まん。少し検証してから戻ってみるか……」
言ってガラムは杖を掲げている。
何をしようとしているのか分からんが、それは検証というものらしい。
「レインストーム!」
ガラムがそう唱えると、どこからともなく雨雲が立ち籠め、一体に雨を降らし始めた。
すげぇ。大賢者って天候まで操れるのかよ?
「この雨で鎮火できるのか?」
「まあ待て。精霊魔法であれば太刀打ちできないだろうが、リオが唱えたのは上位魔法じゃ。威力こそずば抜けているが、消火は可能だと考える」
降りしきる雨。俺たちは固唾を飲んで、純白の炎を見ていた。
するとどうだろう。徐々に炎は小さくなっていく。明らかにガラムの魔法が効果を発揮していた。
「おい、ガラム!?」
「やはり上位魔法でなら相殺可能じゃ。まあしかし、下位魔法ではかなりの時間を要するかもしれん。王都に飛び火することを阻止するくらいじゃな」
「じゃあ、鎮火はどうすんだよ?」
「雨で鎮火するのじゃ。その内に熱を失い自然鎮火する。これだけの範囲なのだから、それを待つしかないの。それが分かっただけでも収穫じゃて」
何ともやりきれない返事だけど、ガラムにも消火できないというのなら、方法はそれしかないのかもな。
「では、王都に戻るのじゃ!」
俺たちはワイバーンに乗っかっていた。
来るときには想像もできない未来。魔物を殲滅したというのに、白い炎という新たな問題を抱えてしまっている。
まあしかし、俺は英雄らしい。
王都を救った英雄になれたらしい。
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