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第90話 英雄

「気のせいよ……」


 エレナの良い匂いがしたと思ったけど、どうやら違うみたいだ。

 唇にも感触が残っているけれど、俺は夢を見ていたのかもな。


 何しろ、視界が真っ白になって気を失ってしまった。それ以降の記憶が少しもない。残っていたとして夢を見ていたのだと思う。


「助けに戻ってくれたんだ……」


「当たり前でしょ? リオを見捨てるなんてできないわ」


 俺はエレナに助けてもらいながら、何とか起き上がっていた。


 まだ頭がクラクラする。本当に俺の魔力は底をついていたはずだ。


「リオよ、お前はこの惨状の原因を知っておるか?」


 ああ、ガラムもいたのかよ。


 って、マジ!?

 俺たちがいた周囲は白い炎が燃えたぎっていたんだ。これって俺が意識を失う前に見た輝きなのか?


「詳しくは分からん。直ぐに昏倒したからな。だけど、直前のことなら覚えている」


 俺は知っていることを話すだけ。知らないことを問われたとして何も答えられないんだ。


「俺は最後、ヒートストームを唱えた」


 俺の返答にガラムは声にならない言葉を発している。

 嘘を口にしていないというのに、まるで信じていない感じだ。


「リオ君、本当ですか? ヒートストームはこのような炎を上げる魔法じゃありませんよ?」


「本当です。俺はヒートストームを一発撃っただけで昏倒してしまったんだ」


「たった一発じゃと? リオよ、よく思い出してみぃ。最後のときフレイムは何回残っておった?」


 その返答なら悩む必要もない。

 俺は魔力ポーションを飲んでから三回フレイムを唱えたんだからな。


「七回残ってた。でも、根こそぎ持っていかれたんだ……」


 二人は目を剥いて驚いている。俺は真実を口にしただけなのに。


「リオ君、ヒートストームとフレイムの使用魔力量は変わらないはず。術者は極めて少ないのですが、このような炎を出すこともありません。熱風が吹きすさび、火傷を負わせる魔法ですから」


 マジで?

 いや、発動の瞬間から真っ白だったけど?


「本当ですって! 発動する瞬間に視界が真っ白に染まった。この炎と同じ色でしたね」


「むむぅ、やはり大精霊の加護は魔法のポテンシャルを最大限に引き出しておるのかもしれん。ヒートストームの術者はかろうじて唱えているだけだとすれば、本来ある威力の一部すら引き出せていない可能性がある」


「閣下、であればリオ君はヒートストームの完成形を唱えていると?」


「まあ、そうなるの。是非とも熟練度を上げて検証してみたいが、一々このような惨状を生み出しては修練することもできんわい」


 まあ、そうだな。

 俺も一々、大規模な火災を発生させたくねぇよ。


「とにもかくにも、十万という大群を一度に焼き払ったのは間違いないですよね?」


「恐らく熱風の時点で死に絶えたじゃろう。今は石や砂まで燃えておる。熱が下がっていくまで、このエリアは燃え続けるかもしれぬ」


 俺のせいなの?

 言っておくけど、俺は身を挺して王都を守っただけで、大規模火災を起こそうとしたわけじゃないのだけどな。


「とにかく、戻りましょうか。鎮火に関してはそれから考えましょう」


「うむ、スタンピードの被害に比べれば、荒野が燃えただけじゃ。気にする必要もない」


 良かったぜ。

 再び牢屋にいれられては堪ったものじゃないからな。責任さえ問われなければ、俺はそれで良いよ。


 とまあ、俺は惨状の責任逃れだけを考えていたわけだが、ここで思いもしない言葉がかけられていた。


 ずっと期待していたこと。実現不可能だと考えていたことを。


「リオ、お主は王都を救った英雄じゃ……」

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