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第84話 救われた命に

 一本の魔力ポーションに俺がどれだけ救われたのか。


 魔法が使えなくては少なからず攻撃を受けてしまう。何しろ、ずっと取り囲まれていたのだから。


「ありがてぇな!!」


 これでまた十回は唱えられる。


 途切れそうだった集中力が蘇っていた。

 ガラムは補給して戻ると言ったんだ。王都までなら往復でも一時間とかからないだろう。10分に一発も撃てるのなら、俺的にはそれで充分だった。

 

 魔物をいなしながら下がっていると、背後には岩山があった。ガラムの雷撃によって、できた隙間は俺の背後を守る壁を与えている。


「うざってぇんだよ! フレイム!」


 岩山に背を預け、周囲の魔物を一掃する。逆算して使えば何の問題もないと。


「いけるぜぇぇっ!」


 かといって、ヒールは使えない。魔力の使用量はさほどもないはずだが、フレイムの回数が減っては元も子もないからだ。


 基本的に長剣を振り、俺は魔物に相対した。キツくなった頃合いにフレイムを挟むという戦法である。


「どんどん巨大化してきやがる……」


 接触してから六時間以上が過ぎた今、大型の魔物が増えてきた。


 オーガなどの巨人種だけでなく、ドラゴンにも似た四足歩行の魔物まで。こんな奴らまで逃げ出すとか、黒竜ってのはどんな災厄なんだよ?


「フレイム!」


 流石に長剣だけで倒すのは骨が折れる。何度斬りかかっても倒せないのだ。

 パラディンに昇格したけれど、長剣では手傷を負わせるだけで致命傷には至らない。何体も一度に相手しなきゃいけないのに、一体と戦っていられるかっての。


「クソ……」


 余裕だと思っていた。

 剣術スキルを得ただけでなく、フレイムの残数が復活したんだ。ガラムが戻るまでなら、充分に戦えるはずだった。


「フレイム!」


 このままじゃ、瞬く間に破綻する。半時間も経たない内に俺はフレイムの残量を撃ち尽くしてしまうことだろう。


「エレナ……元気でな」


 再び俺は絶望の淵に立たされていた。


 流石にこれは無理だ。大型の魔物ばかり現れていたんじゃ、この長剣は役に立たねぇ。一撃で屠ってこそ、大群に立ち向かえるのだから。


 再度、フレイムを唱えようとした矢先


『スキル魔力効率(小)を習得しました』


 脳裏に通知がある。

 今し方撃ち放ったフレイムによって、新しいスキルを習得したらしい。


「魔法効率……?」


 困惑する俺に構わず、更なる通知が届く。


『ヒートストームの使用が可能となっています』


 えっと、何だ?

 ヒートストームってのは大精霊の加護によって得た魔法の一つだっけ? 魔力不足で使えなかった魔法だよな?


「どうする……?」


 こんな今も長剣で魔物をいなすしかない。フレイムを撃ち放たねば、俺は瞬く間に囲まれてしまうはずだ。


「フレイム十回唱えられる魔力量でヒートストームは使えなかった……」


 現状のフレイムはあと七回。その残量でヒートストームが一回撃てるのなら、魔法効率によってフレイムの残数は十一回以上となっているだろう。


「でも、魔法効率(小)だしな……」


 わざわざ(小)となっているんだ。

 過度な期待はするべきじゃないし、フレイムの残数は十一程度だと考えるべき。


 増えたのは嬉しいけれど、五分も経過しない内に三回を唱えていたんだ。フレイムじゃその数があったとして、ガラムが戻るまで耐えられない。


「俺はバカか? 既に死ぬ覚悟を決めたじゃねぇか?」


 俺は自分自身に言い聞かせている。

 フレイムを小出しに使ったとして、人生が僅かに伸びるだけだ。


 もしも、ヒートストームがフレイムの二十倍とか威力を出してみろ? フレイムの残数が尽きたとき、俺はそれを後悔しながら逝くんだぜ?


「未練を残して悪霊になるのはごめんだ」


 窮地にあって俺は笑みを浮かべている。


 やってやろうじゃんか。この大地を炎で覆い尽くしてやろう。


 岩山に背を預けた俺は手をかざして、未知なる魔法を唱えていた。


「ヒートストーム!!」


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