第83話 嫌いだ
ワイバーンが急降下をして、リオに近付く。
私たちは唖然としていました。
なぜなら、リオは長剣を振り回し、襲い来る魔物を次々と斬り裂いていたのです。
「リオ……?」
その光景は私が望んだままでした。
絶体絶命と言える状況にあっても、リオが優勢に見える。
四方から彼は襲われていたというのに、全てを斬り裂いていたのです。
的確な剣技。素早い反応。一度に複数の魔物が襲いかかったとして、彼はその全てを一刀両断としていました。
「すごい……」
四方を魔物に取り囲まれ、一斉に襲いかかってくるのです。だけど、リオは懸命に剣を振って、生にしがみつく。未来が待っていると信じているかのように。
「リオォォオオオオ!!」
叫ばずにはいられない。
私はここにいるよ。
貴方が救った私はここにいます。
お願い。気付いて。
私はここにいるよ……。
「エレナァァアアア!!」
地平線の先まで聞こえるような返答があった。
私の声は届いている。
勇気を与えられた?
リオはまだ諦めないでいてくれるかな?
「ぬおおお! サンダーボルトォォッ!」
ここでガラム様の雷撃が密集した魔物たちを貫く。
生まれた隙間を縫うようにして、ワイバーンが突っ込んでいった。
「リオ、魔力ポーションじゃ! 直ぐに補充して戻る! それまで生き抜くんじゃぞ!」
リオに魔力ポーションを手渡し、直ぐさま浮上する。
私たちはそのまま南下をして王都セントリーフへと急ぐのでした。
「待ってて、リオ……」
瞬く間にリオの姿が小さくなっていく。
私の心は張り裂けそうでした。
私は剣聖だというのに僧侶でしかないリオに後を任せている。僧侶だというのに、彼は私を助けてくれたの。
何だろう。この鬱屈とした気持ち。
私は初めて自分が嫌いになっていました。




