第82話 予想される結末
「きゃあぁああぁ!!」
いつからか、前方から魔物が襲ってくるようになっていました。
こうなると、リオの様子が確認できません。既に私たちも安全とは言えなくなっていたのですから。
「嬢ちゃん、しっかり掴まっておれ!」
「分かりました!」
流石はガラム様です。飛来する魔物を次々と撃ち墜としています。この分だと魔物の猛攻も凌げるような気がする。
「マズいことになったのじゃ……」
しかし、続けられた話は色好い内容を含みません。明らかに優勢であったはずが、問題が起きてしまったようです。
「どうしました!?」
「うむ、魔力ポーションがなくなったのじゃ。あと一本しかない」
「えええ!?」
魔法を使わない私にも分かる。それが意味すること。魔力が切れてしまえば、魔法士に攻撃手段は残らないのだと。
「たくさん持って来たのではないのですか!?」
「マジックポーチには百個しか入らん。そもそも嬢ちゃんを乗せる予定ではないのじゃ。なくなったなら補給に戻るつもりじゃった」
どうやら私のせいみたい。
当初は二人で乗るワイバーンに私が割り込んだから。それにより補給ができなくなったようです。
「嬢ちゃん、最後に低空飛行する。リオに最後の言葉をかけてやれ……」
私は息を呑んでいました。
どうしてそうなるの? 最後の言葉ってお別れってことでしょ?
「いや、リオはまだ戦って……」
「ワシのポーションがなくなったのじゃ。リオも残ってはいない。ワシよりも魔力量がないリオはもう既に死んでおるのかもしれん」
心臓が止まりそう。
私は自分の感情に気付いたばかりなんだけど。リオが好きだってことを。
「本当……でしょうか?」
「ワシよりも早くなくなったはず。一時間か二時間前。その辺りで尽きていたじゃろう。もう長くフレイムの炎を見ていないのじゃ」
ワイバーンが旋回して、高度を下げていく。
私は目を凝らして見たけれど、ガラム様が話した通りでした。
あれ程までに輝いていた炎はもう見えません。リオが生存した証しはもうなかったのです。
「そんな……?」
「勇敢な男じゃ。惚れた女を守ろうとしただけじゃなく、王都を守ろうと戦い続けた。誇り高き我が息子よ……」
ガラム様は手綱から手を離し、手を合わせている。
絶望的な状況を肯定するかのように。
「うそよ……?」
私は祈りなど捧げられない。呆然として、天に召されたリオに贈る言葉など口にできませんでした。
そんな折り、私は聞いた。
神の啓示であるかのような声を。
『うおらぁぁっ!!』
叫ぶような声がしたの。
その声の主を私は知っている。忘れるはずがないし、間違いなく彼の声だ。
「ガラム様、リオはまだ生きています!」
魔力がなくなったとして、リオは戦っている。
そう思えてならない。彼は最後の最後まで諦めてなどいないって。
「むぅ!? どこじゃ!?」
眼下には魔物の群れ。しかし、月明かりが照らし出した大地には丸い穴が開いていたの。
「あそこ! リオを中心にして魔物が取り囲んでいます!」
「何じゃと!? 魔物の侵攻を止めおったのか!?」
聞けばスタンピードは勢いのままに進んでいくらしい。岩があろうと谷があろうと突き進んでいくみたい。
だけど、リオを取り囲むようにして魔物がいる。それはスタンピードがあの場所で止まったことを意味します。
「近付くぞ! 魔力ポーションを手渡すのじゃ!」
「はい!」
近付いたとして私には何もできない。だけど、声くらいはかけられる。
助けてくれたお礼や私の気持ち。今なら素直に伝えられるはず。
「リオォォオオオ!!」
声が枯れるほどの大声で彼の名を呼んだ。
私に気付いて。
私の想いに気付いて……。
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