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第67話 祭りのあと

 最後まで夜会を楽しんだ俺たち。エレナは友人であるモニカと帰っていったけれど、俺はどうしてかガラムと王城の一室にいた。


 武具工房スミスには連絡をいれてあるらしく、ガラムは俺を王城に宿泊できるように動いてくれたみたいだ。


「何だよ? さっきの話はまだ続きがあるのか?」


「そう突っかかるでない。ワシの言う通りに動けば、エレナ嬢を射止めるなど容易いことじゃ。向こうからお願いしてくるじゃろうな」


「早く教えろ! その方法を早く!」


 エレナに関連することならば、先に言えよ。

 俺は彼女たちと帰りたかったんだ。先に理由を聞いていたら、文句など言わなかったというのに。


「落ち着くのじゃ。ワシの話はお主が更なる力を得るためのもの。ただし、生半可なことではない」


「分かってるよ。俺はどうしてもエレナを手に入れたい。何だってやるつもりだ」


 俺の言葉に頷くガラム。

 さっさと教えろ。エレナと別れてまで居残ったんだ。充分な対価を俺は望む。


「スタンピードについては聞いたじゃろ? 実は大陸の北部にある国はどこもスタンピードを止められなんだ。また魔物たちの群れは勢いを弱めることなく、既に王国の直ぐ側まで来ておるらしい」


 確か黒竜が目覚めたとかいう話か?

 それによって幾つもの街が滅びたと聞いている。北部には小国が乱立していたけれど、進路にあったそれらの国々は何の抵抗もできなかったらしい。


「スタンピードは二方向に分かれて進んでおるようじゃ。山を下りた一方はヴァルノス帝国へと向かい、もう一方は不運にもアルカネスト王国へと向かっておる」


 なるほど、話が読めてきた。

 しかし、承諾できかねる話だ。ただの僧侶でしかない俺がスタンピードに立ち向かうなんてさ。


「俺に対処できるというつもりか?」


 確認しなければならない。エレナを手に入れる前に死んでいては何の意味もない。

 俺は英雄になり、彼女から好意を示されなくてはならないのだ。


「無論じゃ。ワシとリオがおれば簡単なこと。大軍勢であろうとも、真なる上位魔法の使い手が二人もいたのなら殲滅できる」


 俺は意図せず笑みを浮かべていた。


 なるほどな。俺一人で戦うわけじゃない。ガラムがどれほどできるのか分からないけれど、同じ上位魔法と口にしたのだ。二人してフレイムと同等の魔法を撃ち続けたのなら殲滅できるというわけだな。


「救国の英雄になれるってか?」


「もう、モテモテじゃぞ? お誂え向きじゃろう?」


 まあ俺は既にモテモテであったけれど、悪くない話だ。


 異性にモテまくるのであれば、エレナも焦るだろうし、何より俺は英雄として名を轟かせることができる。


「俺はフレイムを唱えるだけで良いのか?」


「他の上位魔法のことじゃな? ワシは色々と文献を調べたのじゃが、メガバーストまでしか分からんかった。その威力はフレイムと同程度。しかし、恐らく魔法ランクが低い術者の記録じゃ。よって、最上位のランクを持つだろうリオの魔法は使用を禁じたい」


 俺はまだフレイム以上の魔法をガラムに禁止されている。


 何でもフレイムよりも威力が増せば、練習部屋が吹き飛ぶ恐れがあるからだとか。


「いざというときでも?」


「ヒートストームでも恐らく昏倒するぞ? 魔力ポーションを飲む余裕すらなく意識を失うかもしれん。それであればフレイムを連発する方がマシじゃ」


 一ヶ月の特訓でフレイムは十回程度なら回復なしでも唱えられるようになっていた。しかし、ガラムはまだ充分とは考えていないらしい。


「心配するな。スタンピードは既にかなりの距離を移動しておる。奴らは安全圏まで本能的に逃げておるだけ。上位魔法を連発するだけで、進路を変える可能性がある」


 なるほど、俺たちが新たな脅威として立ち塞がれば良いってことか。


 けれども、かなりの方向転換をしないことには南部にも街があるし、王国の被害は軽減しないことになる。


「王都以外の街は被害に遭っても構わないのか?」


 俺の返答には首を振るガラム。ってことは、やはり同じじゃねぇか。魔物が引き返すくらいに方向転換しないことには王国がその被害に遭うのだから。


「意外と冷静なんじゃな? 心配するなというたのは謝ろう。ワシらの目的は初めから変わっておらぬ……」


 だろうな。

 ま、俺も既に覚悟は決めている。だからガラムは命じれば良いだけだ。


 俺の表情から推し量ったのか、ガラムは最後の言葉を口にする。


「王都でスタンピードを止めるのじゃ」


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