第59話 変態
「「ガガガ、ガラム辺境伯様、ごきげんよう!」」
流石は友人です。ぴったり息の合った挨拶を私たちはしています。
本来ならカーテシーにて敬意を表するべきなのですが、焦った私たちはなぜか敬礼していました。
「ああ、結構じゃ。ひょっとして、リオがお主たちにちょっかいをかけていたのか?」
「滅相もございません! リオは知り合いでして、その……」
全部、モニカのせいだ。
どうして、私がガラム様に弁明しなくちゃいけないってのよ。
「お主らは確か西の伯爵家じゃな? どうしてリオを知っておる?」
「はいはい、辺境伯様! リオ君がエレナの身体を欲しているのです!」
「勝手な嘘をつくなって!?」
リオもまた焦ってる。
ふふふ、同じ条件になったのなら、悪くないわ。
モニカ、もっと言ってやってちょうだい!
「爺さん、俺は別に身体を求めてるわけじゃ……」
「分かっとるわい。リオは真っ直ぐな男じゃと思うておる。大方、からかわれておっただけじゃろ」
なんと、リオはガラム様の信頼を得ているようです。
それにしても、二人はどういう関係なのかしらね?
「それでガラム様はどうしてリオとお知り合いなのですか?」
ここは話題を変えておきましょう。モニカが私たちを掻き回さないように。
「ワシとの関係性はなんじゃろうな。弟子でもなく、友人でもないの。まあ、敢えていうならば、保護者じゃろうか……?」
保護者?
それってリオは辺境伯の庇護下にあるってこと?
だけど、リオはグレイス侯爵様が既に……。
(あっ、分かっちゃったかも……)
予想するに、リオはリズ様との婚約を完璧に断ったんだわ。
だから、後ろ盾が必要になった。気の良い辺境伯様に取り入って、グレイス侯爵様が何かしらの罰則を加えることを阻止している。
(間違いないわ。それほどまでにリオは私の身体を……)
考えると、顔が真っ赤になる。
リオはどれだけ無茶をするのよ。リズ様との婚約はとても良いお話だったのに、辺境伯様を巻き込まねばならないほど侯爵様を怒らせたのね。
やはり、リオは私の身体だけを欲している。他の誰かでは駄目みたい。
代替するものがなくて、リオは私だけが欲しいってこと。
「ガラム様、私はリオの……」
保護者を買って出たのであれば、私は伝えておかねばならない。
この先に私はリオに弄ばれてしまう。身体だけの関係を持つ約束をしたんだもの。
リオが約束の通りに、私の身体だけを見ているのなら、私は応えるべきだ。
「ああ、よい。知っておるぞ。何も語らずとも問題ないのじゃ」
え? 既にリオは話をしているってこと?
私とリオが爛れた関係になろうとしていることについて。
「そうでしたか。お恥ずかしい限りです……」
「よいのじゃ。若さかのぉ。ワシも思い出すわい」
「まさかガラム様も!?」
意外です。聖人のようなガラム様が若かりし日に暴れ回っていたなんて。
そうなると、リオの性癖も普通なのかもと思えてしまう。ガラム様でも性人であられたのなら、リオだってやはり男の子なんだもの。
「それを聞いて安心しました。私は悩んでいたのですけれど」
「若い頃に悩むのは悪いことではない。身分差なんぞ考える必要などないのじゃよ」
心に響く金言でした。
一夜限りの関係なんだもの。身分なんて関係ないよね? 辺境伯様のお墨付きなんだし、私は約束通りにリオと一夜を共にしよう。
「分かりました。助言いただきありがとうございます!」
「構わぬ。まあそれで、提案なのじゃが……」
既に決断できたというのに、ガラム様はまだ助言があるみたい。
年の功とはいうけれど、まさにガラム様は金言が詰まった宝箱ね。
「リオを夜会に参加させようと思う。そこで励んではどうかの?」
えええ!?
招待状のないリオを夜会にですって!?
「ガラム様、本気なのでしょうか?」
「無論じゃ。ワシも顔を出すように言われておるでの。リオを連れていくくらいわけないのじゃ」
何てことでしょう。よりによって夜会で励めだなんて。
大胆過ぎるわ。私はまだそこまでの覚悟を決められていないってのに。
「どうなるのか楽しみじゃのぉ」
しかも、見るつもりみたい。
私とリオがパーティーの隅っこで励んでいる様子をガラム様は覗き見るつもりらしい。
貴族の男性は概ね性癖が壊れていると聞きますし、実際に他者の行為を見るのが好きな変態だっている。まあですが、聖人と思わせて、とんだ性人だったのね。
「恥ずかしいです……」
「青春とは自我をさらけ出すものじゃ。他人の目を気にする必要はないのじゃよ」
駄目だこれ。
私は初めてだというのに、どういうわけか辺境伯様の眼前で行為に励むしかなくなっていました。
私はどうしたらいいの?
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