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第58話 意外な人物に

 私は王城へと来ていました。

 何を隠そうソフィア王女殿下主催の夜会が開催されるからです。


 私は欠席の意向でしたけれど、わざわざ王都へやって来た友人のモニカが是非にというので、一緒に参加することに。


「ねぇ、エレナ。その男爵家の五男坊って今夜のパーティーに来るの?」


 ふと話題はリオの話に。

 一応の経緯は説明したんだけど、モニカは遊び半分で付き合うべきだとゴリ押ししてくるのよね。モニカに相談した私が間違ってたかも。


「来ないよ。王女殿下の夜会に下位貴族の五男坊が呼ばれるはずないじゃない。私たちでも一番格下でしょ?」


 王女殿下主催の夜会。基本は上位貴族たちが集う場です。


 特にソフィア様のお相手を捜す目的がありますから、下手な身分の男性が呼ばれるはずもありません。


「そっかぁ、会ってみたいなぁ。エレナがいらないのだったら、わたしが一夜限りのアヴァンチュールを……」


「モニカには婚約者がいるでしょ!? 何言ってんの!?」


「だって、王都だよぉ? 性が乱れまくってる王都に来たのに、何もしないまま田舎へ帰るなんて勿体ないじゃん」


 ずっと、こんな調子です。

 どこで王都の噂を聞いているのか分かりませんが、私が知る限り王都も地方も変わらない。一部の好色家たちが噂の発信源になっているだけでしょう。


 馬車を降りて、私たちは王宮の中庭まで歩いて行くことに。

 まあそれで、私は意外な人物と会うことになりました。


「リオ!?」


 どうしてか王城の方角から歩いてきたのはリオでした。


 随分と会っていない。だけど、見間違うはずもありません。何しろ、私はずっと彼のことを考え続けていたのですから。


「ええ!? エレナ!?」


 彼もまた驚いています。

 いつもの格好なので夜会に出席するという感じではない。つまり彼は夜会とは異なる用事で王城まで来たらしい。


「どうして王城にいるのよ? てか、全然会いに来ないのはどうなってんの!?」


 意図せず声を荒らげてしまう。


 リズ様との関係が解消されたかどうか、私はずっと報告を待っていたんだもの。モヤモヤした期間の分だけ声が大きくなっても仕方ないわ。


「すまん。俺もめちゃくちゃ忙しくてさ。時間が取れなかったんだ」


 ぶぅぅ。

 普通は足繁く通うものでしょ? 身体を求めているのなら、せめて誠意だけは見せるものよ?


「あっそ、私って後回しにされるくらいの女だったのね?」


「違うって! 鍛冶の修行をしたあとは魔法の特訓なんだよ。毎日くたくたでさ」


 言い訳は聞きたくない。どれだけ忙しくても、一ヶ月放置するってどういうつもりよ?

 私がどれだけ悩んだのか知らないくせに。


「もう知らない。リオはリズ様とお幸せに!」


「エレナァァ! そんなこと言うなよ……」


 プイッと顔を背けると、リオはとても困った顔をしていました。


 うん、やっぱこの立ち位置だわ。私が主導権を握ってなきゃ。

 都合の良いときだけ抱かれるなんて我慢ならないし。


「エレナ、ひょっとしてこの男の子がリオ君!?」


 あ、そういや問題児が一緒だったわ。


 一夜限りの関係を夢見るお馬鹿さん。婚約者がいるってのに、遊ぶつもりで王都にやって来た超お馬鹿さんです。


「そうだけど……」


「きゃぁぁっ! 可愛い! カッコ良くもあるわ! ねぇねぇリオ君、このあと暇かなぁ?」


「ちょっと、モニカ!」


 最悪だわ。リオに会いたいと願っていたけれど、どうして今なのよ。


 聖地母神様は私の願いを叶えず、モニカの歪んだ願いを叶えるっての? そうなると今後は性地母神様と呼ぶしかないわね。


「わたしは今晩ガラ空きなの。後腐れのない恋をしてみない?」


 今晩は夜会でしょうが。

 王女殿下主催のパーティーをドタキャンしたならば、絶対に不敬罪よ。


 断頭台に登る覚悟があるのなら、好きにしたら良いわ。


「待って、君は誰!? 俺は別に後腐れのない恋とかいらないって!」


 意外にもリオはモニカの誘いを断っています。

 身体目当てだというのに、モニカが気に入らないのかしら?


「そんなこと言わないでぇ。イイことしよ?」


「他を当たってくれ! 俺はその……経験ないし……」


 ああ、リオってば未経験だから二の足を踏んでいるのね。


 納得だわ。恥を掻くのは流石にってことか。


「大丈夫! わたしが教えてあげる! すっごいサービスしちゃうんだから」


 私は薄い目をしてモニカを見ていました。

 夜会に行ったらどうなるのだろうかと。モニカは手当たり次第に男を物色するかもしれません。


 正直に困り果てていたリオと私だけど、ここで救世主が現れます。


「むぅ? リオ、まだ王城にいたのか?」


 思いもしない人物に話しかけられ、私だけでなくリオの腕に絡みついていたモニカも直立不動になっていました。


 名を呼ぶことしかできない。

 動揺した私たちは令嬢であるというのに、敬礼をして彼の名を口にします。


「「ガガガ、ガラム辺境伯様、ごきげんよう!」」

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