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第52話 王城へ

 俺はガラムに連れられて、街門の外ではなく王城へと連れられていた。


 これからフレイムの特訓をするつもりなのに、一体どこへ連れて行くつもりなんだか。


「おい、俺は王様になんか用事はないぞ?」


「リオよ、お前は少しくらい媚びを売って生きるべきじゃぞ? ワシに気を遣う必要はないけれど、王様や上位の貴族にはそれなりにすり寄っておくのじゃ」


「分かってるけど、俺はまだそこまでの人間じゃねぇよ」


 そりゃ、普通に面会できるのなら、名前を知ってもらう方が良い、だけど、現状の俺は謁見したとしてアピールするものが何もないんだって。


「まあ、今日は別に謁見などではない。お主がフレイムの特訓をするだけじゃて」


 城門を潜ったあと、どうしてか王城へと向かわずに、ガラムは敷地内の小さな施設へと到着していた。


 その建物には【王宮魔道士団】と書かれている。


「おい、俺は団員になんぞならねぇって言っただろ!?」


「分かっとるわい。ここの施設を使うだけじゃ」


 ああ、荒野に出なくてもフレイムが撃てる施設なのかな?

 だったら馬車代もいらねぇし、近いし一石二鳥だな。


 ガラムに続いて、俺は魔道士団の詰め所へと入っていく。


「ガラム閣下、何用でしょうか!?」


 いきなりだった。受付にいた男は直ぐさま立ち上がり、ガラムに敬礼して見せた。


 いや、すげぇな。長く勤め上げただけだというのに、ガラムは今も威光を撒き散らしてやがんのかよ。


「いや、よい。少し上級魔法用の鍛錬室を使いたいだけじゃて」


「ああ、そうでしたか! 久しぶりに団長のブリザードが見られるというのですね!?」


「ああいや、ワシじゃない。この若者が使うのじゃ」


「はぁ?」


 どうにも困惑する受付の男。まあ、そうだろうな。汚らしい服を着た若造が施設を使いたいだなんて。


「下位魔法の鍛錬室では駄目なのでしょうか?」


「魔石は用意しておる。上級魔法用を使うのじゃ」


「そうでしたか。ならば、どうぞ……」


 丁寧な対応で俺たちは目的の部屋へと向かう。


 俺はとんでもない大きな部屋を予想していたんだが、連れられたのは先日捕まった折の牢屋と変わらない小部屋である。


「おい、ここで撃ったら二人とも黒焦げだぞ?」


「貴様、閣下に失礼だろうが!?」


「ああ、よいのじゃ。リオは古い知り合いでの。昔からこうなのじゃよ」


 完全に嘘であったけれど、男性は納得したみたいだ。


 俺と爺さんは面識こそあったけれど、間違っても知り合いといえるほどの関係はねぇっての。


「まずは魔石をセットしなければの……」


「魔石なんて何に使うんだよ?」


 ガラムは部屋の中心にある魔法陣へ、大きな魔石を置く。


 何のお守りかしらねぇけど、俺はこの小部屋でフレイムを撃つ勇気なんてないからな。


「魔石を使用して、魔法障壁を起動させるのじゃ。この魔法陣は魔王の身体に刻まれていた術式らしい。古代の人間は魔法を使わなんだが、魔王には魔法が効かなかったみたいなのじゃよ」


 聞けば魔法障壁を起動すると、どのような魔法も発動後、幾ばくもなく消失してしまうとのこと。よって、このような小部屋でも問題なく撃ち放てるという。


「まあしかし、この術式は魔力を過度に使うでの。危険度2等級以上の魔物から採取した魔石でないと動かせんのじゃ。下位魔法用に書き換えたものならば、どんな魔石でも充分に機能するのじゃがな」


 そういうことか。

 確かにデカい魔石だ。俺が倒したファイアードラゴンも解体すれば、これくらいの魔石が取り出せたのかもしれない。


「ガラム閣下、本当にこの少年が上位魔法を?」


 今も受付の男は疑ったままだ。


 失礼な奴だな。俺は野原を焼き払ってテロリストに間違えられた人間だというのに。


 俺に代わって、ガラムが答えた。


 期待感を煽るよりも、ジョーク的な言葉を。


「心して見ておれ。漏らしてもしらんぞ?」


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