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第48話 ガラムという爺さん

「俗に言うレベルアップじゃ。飛躍的に強くなれるのじゃよ。それは耐性を得たからこその事象。かつての魔王討伐は世界を一変させたのじゃ。この世界に魔素が生み出されたこと。それにより人は進化したと言えるだろう」


 マジかよ。

 全然、興味のなかった話だが、俺にもめっちゃ関係がある。


 レベルについては分からないけれど、魔素を吸い込んだことがあったんだ。加えて、そのあと俺は身体に力が溢れる感覚を覚えている。


「じゃあさ、俺たちと同じように暗黒素を得た魔物はレベルアップしてんのか?」


 ここで話を戻す。

 北にいた黒竜が暗黒素を得たという話。元々、強大な存在が更なる力を得たのかと。


「暗黒素は魔王の残滓だといったじゃろ? レベルアップとは明確に異なる。一度に強大な力を得る対価として、破壊衝動に精神を乗っ取られてしまうのじゃ」


「てことは、北では黒竜が暴れ回っているのかよ? 黒竜は耐性がなかったのか?」


「恐らく黒竜を襲った暗黒素は濃度が桁違いじゃったはず。運悪く竜種が感染しただけじゃ。また暴れ回る黒竜に、魔物たちは一斉に山を下りた。それはスタンピードと呼ばれ、我を失った魔物たちのせいで既に幾つもの町が滅んだという」


 今のところ、黒竜の被害はないようだ。

 かといって、魔物たちが逃げ出すほどに暴れ回っているのなら、いずれ黒竜の被害も出てくるだろう。


「それで爺さんが呼び出されたってわけか?」


「若い魔法士が育っていないのじゃ。広域殲滅魔法を使える人間がいない。ファイアーやアイス、ウィンドといった魔法ではスタンピードに対処できないからの」


 俺も知るファイアーはやはり威力が弱いらしい。

 聞いた感じでは王宮魔道士団にはろくな魔法使いがいないみたいだな。


「そんなので戦えるのかよ?」


「じゃから、気が進まん。北の最果てから、スタンピードの到着まで半年との予測じゃった。それ故に歩いて来たのじゃが、それは女神様のお導きであったのかもしれん」


 爺さんも可哀想にな。


 ぶっちゃけ、死地に呼び出されたみたいなもんだし。

 村や町が壊滅する恐れのあるスタンピードに対処しなければならないなんて不幸すぎる。


「ま、頑張ってくれ。俺は応援してるぞ?」


「馬鹿を言うな。リオ、お主は類い希なる力を授かった。大精霊に魅入られし人間が成すべきことは一つ。共に世界を救おうぞ」


 何を言っているんだか。

 俺は世界の救済を任されるような人間じゃない。ただの僧侶でしかないのだから。


「俺は僧侶だと言っただろうが? せめてジョブが戦闘職である人間を勧誘しろ」


「今し方、フレイムを放っただろう? あんなものを見せられては勧誘するしかあるまい?」


「ざけんな。俺は魔法を極めたいわけじゃねぇんだ。フレイムの練習だって、鍛冶職人になるためだからな」


「ななな、なんと!? お主はあれだけのフレイムを扱えるというのに、鍛冶職人になろうとしておるのか!?」


 だから、うるせぇって。

 俺は猛烈に鍛冶を極めたいんだよ。


「弟子入りしている。師匠には筋が良いって褒められたんだ!」


「まことか? いやしかし、筋が良いといえば、魔法士となる素質もピカイチじゃぞ?」


 褒められるのは嬉しいけど、俺には断る理由が多々あった。

 世話になっている師匠を裏切れないし、今さら魔法使いになるなんて言えるはずがねぇって。


「俺の好きな人が鍛冶職人なんだ。それで彼女は剣を振って戦う男がタイプらしい。魔法使いなんて鼻で笑うことだろうよ」


 きっと魔法を極めたとしても、エレナの眼中には入らない。


 俺は鍛冶を極めながら、剣術を学んでいかねばならんのだ。一目惚れした人が望む姿を手に入れないといけない。


「むぅ、何たることだ。せっかく逸材を発見できたというのに」


 どうやら爺さんは強要しない感じだ。


 俺も路頭に迷ってた頃なら飛びついたかもしれない。だけど、今はちゃんと目標があるし、日々を忙しく過ごしているのだ。


「リオよ、ワシはガラム・ウェイルという。聞けば、リオは今後もフレイムの熟練度を上げようというのだろう? ワシは手伝ってやっても良いぞ?」


「見てるだけだろうが? 別に俺は一人でもできる。今日だって一人だったからな?」


 可愛い女の子なら張り切ってしまうけれど、相手がお爺ちゃんだなんてやる気も起きねぇって。今後も一人で練習は続けるつもりだ。


「一人なら毎日一発しか撃てんだろう? ワシなら魔力ポーションを幾らでも用意できる。十日はかかる訓練が一日でできたりするぞ?」


 そういや、爺さんにもらった魔力ポーションのおかげで、俺は意識を保ったままだ。

 手っ取り早く熟練度を上げたいのなら、一日に何発も撃った方が絶対に良い。


「ガラムに何のメリットがある?」


 間違っても俺は王宮魔道士団になんか入りたくない。鍛冶を極めて自分の大剣を作り、その上で英雄になるのが俺の理想なのだから。


「ワシは別に何も強要せん。お主が強くなれば、それでいいのじゃ。リオとて、住む街が魔物に襲われたら戦うじゃろ? 殲滅する力があるのなら、脅威に立ち向かうじゃろ? ワシはそれだけで良い。王都の守護者を育成したいだけじゃ」


 ま、確かにな。

 もしも俺に勝てる見込みがあるのなら、俺は戦うかもしれない。仲の良い人やエレナを守れるなら。


 魔道士団への入団を強制しないのであれば、俺はガラムに手伝ってもらうべきかもな。


「じゃあ、頼みたい。毎日、夕方に俺は魔法の練習をする。昼間は鍛冶の修行があるからな」


「承知したぞ。大量の魔力ポーションを用意しておくのじゃ」


「ああ、よろしくな……」


 孤独な訓練になるかと思ったフレイムの熟練度上げ。


 俺はひょんなことから、仲間というか指導者に出会ってしまった。


 これから先、俺はどう成長していくのだろうな。


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