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第47話 魂レベル

「どうやら災厄が目覚めたらしい」


 え? 何それ?

 伝承にあるような英雄譚的な何かなのか?


「魔王でも目覚めたっていうつもりか?」


 伝承によると古代文明は魔王により滅びかけたという。


 突如として現れた天の使い。つまりは勇者により討伐されたというが、現在の人間からすると眉唾物であって、信じているのは聖地母神教会の面々くらいだろう。


「魔王は討伐されておる。よって、その残滓と呼ぶべきものじゃ。どうやら北の果てで黒竜が目覚めたらしい」


「その竜が魔王の残滓? 竜種くらい山奥にならいるだろ?」


「まあ、その黒竜も普通に生息していた竜種の一つなんじゃがな。魔王討伐後、世界には魔素が満ちた。魔王消失時に大量の魔素が噴き出したからじゃ。人が魔法を使えるようになったのは、それが起源なのじゃよ」


 爺さんも伝承を信じる一人みたいだ。


 大昔から人は魔法を使っている。だから、それは教会が威信を高めるためについた嘘だとしか思えねぇな。


「昔から魔法はあったはずだぞ?」


「リオ、お主は僧侶なのに信じておらんのか? 嘆かわしい……」


 そう言われても、荒唐無稽な話にしか聞こえねぇんだって。


「大気に満ちた魔素。いつしか人はそれを体内に取り込めるようになった。最初に魔法を使ったのは、歴史上最初の魔法使い。ラプスという魔女であった」


 ラプスの伝承は俺も知っている。


 原初の魔女というそのまんまな伝記が残っているくらいだ。あらゆる魔法を習得した魔法使いらしい。


「世に伝う原初の魔女が誕生してから、人は魔法使いなるジョブを授かり始めたのじゃ。それまでは選択になかったものが生まれたのじゃよ。皮肉なことに世界を震撼させた災厄によって、魔法使いは生み出された」


「いや、百歩譲って魔王が撒き散らした魔素が原因であったとして、現在の災厄とは関係ないだろう?」


「最後まで話を聞け? 魔王が飛散させたのは魔素だけではないのじゃ。伝承によると黒い影を魔王は解き放ったという」


 爺さんは続けた。

 魔王がその消失時に何を解き放っていたのかを。


「世界に撒かれた影こそが暗黒素。動物が魔物と化したり、オーガ等の亜人が生まれたのもそのせいだとされておる。時代時代に現れた災厄は暗黒素が原因なのじゃ」


「黒竜も暗黒素に冒されておかしくなっただって? 俺や爺さんは大丈夫なのに、亜人種が生み出された? 馬鹿馬鹿しい。竜種は元から好戦的だろうがよ?」


「お主、本当に僧侶なのか? まあ、野良で僧侶をしとるくらいじゃから仕方ないの。この世にはドワーフやエルフといった人種も存在したのじゃぞ? しかし、数が少なかった彼らは暗黒素の耐性を得る前に絶滅したのじゃ。エルフは悪魔となり、ドワーフは亜人となったのじゃよ」


 エルフやドワーフもまた伝承上の人種だった。


 しかし、今や誰も存在を信じていない。彼らは何も後世に残していないのだ。

 文明や技術が少しでも残っていたのなら、絶滅を信じてやってもいいけどな。


「で、俺たち人族は耐性を得たといういつもりか?」


「我らは数が多かったからの。それでもゴブリンなど小型の亜人種は人族が変貌した姿だと言われておる。当時は等しく魔に墜ちる可能性があったというわけじゃ」


 魔王の話を信じるとすれば、全体の内容も繋がっているような気もする。

 世に存在する魔は魔王が死の淵に作り上げたのだと。


「じゃあ、魔に墜ちた者と耐性を得た者の違いは凶暴さだけなのかよ?」


「明確な違いがある。魔に墜ちた者の体内には魔核が備わっておる。それは効率よく魔素を集められるもので、人族はそれを魔石と呼んでおるのじゃ」


 魔石や魔核なら俺にも分かる。スライムの核石も魔石の一種だし、高濃度魔素が凝縮した魔石はギルドで買い取ってくれるんだ。


「魔物を倒せば、溜め込んだ魔素が飛散する。それを身に浴びることで、人は強度を得る。それまで鍛錬に頼っていた強さ。魔素への耐性を得た人族は魔素を取り込むことで精神や肉体が強化されるのじゃ」


 そういや、俺にも経験があった。


 目に見えて黒い靄を吸い込んだこと。ファイアードラゴンやワイルダーピッグの討伐時に俺はそれらを身体に浴びていたんだ。


 爺さんはその現象を明確に述べていく。

 俺が得たものが何であるのかを。


「人は魔素を取り込むことで魂レベルを昇華させるのじゃ」


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