表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/232

第46話 不穏な話

「大精霊は神に匹敵する存在じゃぞ……?」


 えっと何?

 あの可愛らしい妖精が神様だって?


「マジで? あいつは俺に大精霊の加護をくれたんだけど?」


「大精霊の加護だとぉぉぉっ!?」


 うるせぇって。

 鼓膜が破れるじゃねぇかよ。一々、聞き返すんじゃないって。


「そしたらフレイムとか四つの魔法を習得した」


 呆然と頭を振る爺さん。静かなのは有り難いけれど、黙ってねぇで何か言えってんだよ。


「あり得ん……。基本的に魔法使いは女神の声を聞けないというのに」


「んん? 女神の声って信仰心が必要なんだっけ?」


「うむ。魔法使いは魔の力を使う者を指す。よって、信仰値が低くなってしまうのだ」


「俺は別に魔法使いじゃないし。僧侶だからな……」


「えええええっ!?」


 うるさいのか黙ってるのか両極端な爺さんだ。


 俺が僧侶であるのが、そんなにも驚愕することだったのか?


「お主、僧侶であるというのに最高ランクのフレイムを唱えたのか!?」


「最高ランクって何だよ? フレイムはフレイムだろうが……」


「それすら知らんとは……。よいか? 魔法には全てランクがある。調べるのは簡単じゃないが、概ね五つにランク分けされておるのだ。お主が唱えたフレイムは間違いなくランク5。それ以上であっても驚かぬわ」


 ホントによく分かんねぇ爺さんだ。調べるのは簡単じゃないと言いながらランク5ってのはどういうことなんだよ?


「どうやって調べた?」


「調べとらんわい。攻撃魔法はその威力で大凡予想できるというだけじゃ。かつて見たランク5のフレイムに勝るとも劣らない威力じゃった。よって最高ランクだと思うただけじゃよ」


 なるほどね。

 過去の記憶と照合したことで判明したってことなのか。


「で、僧侶がフレイムを唱えると何か問題でも?」


「大魔道士でもなければ、あり得ぬことじゃぞ? まして最高ランクのフレイムじゃからなぁ」


 そもそも俺はサラマンダーにもらっただけだ。一から学んで習得したわけじゃないからな。誰かと比べるのが間違っている。


「お主、名を何という?」


「俺か? 俺はリオ・スノーウッドっていうんだ」


「ほう、男爵家の跡取りであったか?」


 あれ?

 この爺さん、スノーウッド男爵家を知ってんのか?


 あり得ないほどド田舎にあるのだけど。


「知ってんのか? 男爵領は何もない田舎だぞ?」


「此度も通ってきたし、かつて男爵領にワーベアが大量発生したことがあったじゃろ? ワシはその駆除を任されていたのじゃ」


 ああ、それなら覚えてるぞ!

 俺が確か八歳の頃。所領のあちこちにワーベアが現れて、領民が多数亡くなったんだっけ。それで父上が討伐依頼を国に出したんだった。


「あのときの爺さんか!? まだ爺さんやってたんだな!?」


「失礼な奴じゃな。しかし、その通りじゃ。ワシの魔道分隊に出撃命令が下りたのじゃよ。それでスノーウッド男爵領へ向かったのじゃ」


「そっか、あのときは助かったぜ。ぶっちゃけ子供は外にも出られなかったんだ」


 最終的にワーベアの討伐数は百を超えていた。冒険者では手が回らず、国を頼るしかなかったってわけ。


「んなわけで、ワシは王宮魔道士団の一員。別に金がなくて歩いておったわけじゃない」


「そうなのな。身なりから、ただの爺さんにしか見えなかったぜ。それで王都に呼ばれた理由は何だ? もう隠居してもよさそうなのに」


 聞けば、古めかしいローブは盗賊などに襲われる面倒を避けるためだという。確かに、しょぼくれた爺さんを襲う野党などいないと思う。


 それで爺さんは俺の問いに答えている。


 想像すらできないその理由を。


「どうやら災厄が目覚めたらしい」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ