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第37話 新たな目標

 エレナと別れた俺は鍛冶工房スミスへと帰ってきた。

 まあしかし、扉を開くのには勇気がいる。


 一連の騒動はドルース師匠も知っているのだ。何しろ、生産者ギルドまで俺を捜しに行ったみたいだし。


「ま、現状では釈放されたし、堂々と入ればいいか」


 店舗側の扉を開く。俺は何食わぬ顔で戻るだけだ。


 今となっては宿代くらい支払えるけれど、俺はスミスにて部屋を与えられている。心配させた俺が顔を見せないなんて許されないことだろう。


「リオさん!?」


 まずは奇跡のエルフことルミアである。

 彼女はとても驚いたあと、目尻の涙を拭った。


「心配かけたけど、釈放されたよ。グレイス侯爵様が手を回してくださったんだ」


「良かったです! あたしたちも騎士団に掛け合ったのですけど、聞き入れてもらえなくて……」


 本当に悪かった。

 せめて王都から距離を取るべきだったな。俺は魔物を恐れて割と近場を選んでしまったんだ。


「おお、リオ! よくぞ戻った! さあ、入れ!」


 二日ぶりに会う二人はやはり俺を家族のように迎えてくれる。


 有り難いことだな。僅かな時間しか共にしていないのに、家族同然に扱ってくれるなんてさ。


「師匠もご迷惑をおかけしました。まさかフレイムを使って魔力切れになるとか考えもしなかったんです」


「ふはは! 精霊様は何を血迷ったんだろうな? 身の丈に合った魔法を授けるだけで良かったというのに!」


「まったくですよ……」


 ぶっちゃけ、他の魔法が使えなくて良かった。


 フレイム以上の魔法になると、王都まで被害が出ていたかもしれん。その場合は侯爵様であっても釈放などされなかったはずだ。


「しかし、街門周辺を焼け野原にしたらしいじゃないか? 使いこなせるようになれば、火を熾すだけで雇いたいという工房が出てくるだろうな」


「え? 本当ですか?」


 もう二度と使わないようにと考えていたんだけど、師匠はフレイムを使いこなせるようになるべきだと考えているらしい。


「うむ。ミスリルやオリハルコンといった超一流の鉱石を溶かすには相当な火力が必要となる。百人がかりのファイアーで溶かすくらいだからな。リオなら一人で賄えるだろ? これはかなりのアドバンテージだ」


 マジっすか。でも、フレイムの特訓をするとなれば、一人じゃ無理。俺は気を失ってしまうのだし、誰かに付き添ってもらわなきゃいけなくなる。


「魔力ってどうやったら増えるんでしょう?」


 俺がこの先にフレイムを使いこなせるようになるのなら、魔力量の増大が必須であった。

 師匠が知っているのか分からないけれど、俺には他に頼る人がいない。


「使えば増えるはずだ。ワシも若い頃は何度も使えなかったが、今じゃ一日中ファイアーを唱えられる。とにかく鍛冶も魔法も試行数が大事だな」


 なるほど、何事も一歩ずつか。二段飛ばしで、強くなったり上手くなったりしないってことか。


「じゃあ、努力します。一日の終わりに使って眠ればいいだけですし」


 王都から距離を取らないといけないから、馬車を雇うしかないな。

 昏睡した俺を工房まで運んでくれる契約をすればいい。お金はもう充分に持っているのだから。


「リオさん、頑張ってくださいね! 一流の鍛冶職人を目指しましょう!」


 ルミアも応援してくれるようだし、俺は動き出すべきだ。今となっては神職者になるよりも、鍛冶職人を極めたかったから。


 人生の方向性が決まった。

 俺はこのまま鍛冶の修行を続け、フレイムの熟練度と魔力量の増大を目指す。


 目標があるっていいな。何だか俺は意欲に満ち溢れていたんだ。

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