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第34話 報告を前に

 レインボーホーンラビットの友人という亡骸を腰紐に括り付ける。友人には悪いと思うけれど、やはり両手で抱えると武器が握れなくなるからな。


 牙さえあれば、俺は戦えるはず。エレナの剣縛りがなくなった俺はそこそこの強者だと思うんだよ。


「割とレインボーホーンラビットは生息しているのかも」


 十年ぶりだと聞いていたし、難航するものと考えていた。しかし、蓋を開けば二匹もいたんだ。人間が想像するより、彼らは存在するのかもしれない。


「やっぱ俺は幸運なんだろう」


 もう偶然じゃないはず。流石にこの短期間でスキルを習得しすぎだ。洗礼の儀でジョブだけでなく、幸運を授かったという話は本当なのだろう。


 森を抜けて、俺は王都セントリーフへと戻っていた。

 そのままグレイス侯爵邸へ向かおうかと考えたけれど、やはり相手は上位貴族。エレナを誘って行くことにした。


 勇ましき戦士たちの嗜みへ入ると、エレナはカウンターに肘をついてボウッとしている。


「エレナ?」


 俺が声をかけると、どうしてか彼女は跳び上がるようにして驚く。


「リオ、もう戻ったの!?」


「ああうん、レインボーホーンラビットを手に入れたからな」


「凄いじゃない!? 一日で依頼を達成しちゃうとかさ!」


 笑みを見せるエレナ。いや、まさに眼福だな。


 エレナの笑顔は恐らく世界を幸せにする。実際にレインボーホーンラビットを倒したわけじゃなかったが、それでも俺は嬉しかった。


「それでさ、侯爵邸へ行くのに同行して欲しいんだ。エレナが良ければだけど」


「もちろんよ! てか、私はまだ(アブノーマルプレイについて)友達に聞いていないのだけど……」


「友達? 上位貴族なのか?」


「同じ伯爵令嬢よ。子爵家のご長男と婚約したの」


 まるで会話が繋がらないな。侯爵との面会についてきて欲しいだけなのに、どうして友達の話になったんだろ?


 まあでも、伯爵令嬢が子爵という下位貴族と婚約したって話は悪くない。俺は更に下の男爵家で五男坊だったけれど。


「リオ、いよいよね?」


「ああ、俺は成り上がるぞ。勇姿を見届けてくれ」


 何だか先日から、エレナとの間にあった壁を感じない。ようやく俺の愛が彼女に届いたのかもしれないな。


「少し気が早いけれど、もしも俺が爵位を得られたのなら話がある。俺には欲しいものがあるんだ。どうしても譲れないものが……」


 やべぇ、言っちゃったよ。

 雰囲気に流されて、エレナと婚約したいとかいう話を朧気にもしてしまうなんて。


「そうなると拒否できないわね。でも、そんなに(私の身体が)欲しいの? 順序ってものがあるとは思うけど、そういうのも悪くないと考えを改めたわ」


「俺は君と色々な経験をしたい。ささやかな願望だよ。たとえば、街中の名所や綺麗な泉の畔とか一緒に行ってみたいんだ……」


「名所で一緒にイクって!? いや、野外とかモニカにも聞いてないよ! 流石にそれはちょっと……」


 過剰に照れるエレナ。やっぱ二人して出歩くのは恥ずかしいのかな。

 伯爵令嬢だし、婚約前に男女で行動するのは避けた方が良いのかもしれない。


「追々で構わない。俺はそれを望んでいる」


「わわわ、分かった。かなり勇気が必要だけど善処するわ。友達にも聞いてみるね……」


 とりあえず、同意が得られた感じだ。

 事あるごとに出てくる友達が気になるけれど、きっと親友なのだろうな。何事にも、エレナは親友の意見を取り入れるつもりだと思う。


「とりあえず、侯爵様のお考え次第だ……」


「そうよね。私たちが目指す(肉体)関係は悟られないようにしないと。侯爵様が口を挟まれるとマズいことになる」


「マズいこと?」


 メイフィールド伯爵家は寄子だと言っていたけれど、ひょっとすると婿になる候補の世話まで侯爵様がしているのか?


 授爵するや俺たちが交際を始めては、今まで侯爵様が世話をしていた相手方に迷惑がかかるのかもな。


「じゃあ、秘密にしとかないとな……」


「ええ、流石に(野外で変態なプレイをするなんて)口が裂けてもいえないわ。お父様にも伝わってしまうだろうし」


 それはやべぇな。

 仮に俺が授爵したとして下位貴族だ。従って、まだ伯爵様に知られてはならない。


「よし、気を引き締めて行くぞ。依頼は遂げたんだ。強気に出ても構わないだろう」


「私に任せてくれない? 一応は割と良くしてもらってるから」


「じゃあ、頼む。大っぴらにできるように上手く頼み込んでくれ!」


「ふふ、リオってば本当に露出狂なのね?」


 何だか、よく分からない返答をもらったけど、とりあえず頷いておこうか。


 きっと聞き取れなかっただけ。エレナと俺の心の向きは少しのズレも生じていないのだから。


 意気揚々と俺たちは出発する。運命が好転することを願って。


 二人の未来は明るく照らし出されているはずなんだ。

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