表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/232

第030話 最悪の展開に

 えっと、何だ?

 どうして俺をそっちのけで話が進んでいるのだろう。正直に俺は依頼を受けられないと考えていたのに、侯爵様だけでなくエレナがめちゃくちゃ前向きなんだけど。


 既に侯爵様とエレナは固い握手を交わしている。まるで彼女が俺の代理人であるかのように。


「リオ、貴殿には期待している。早急に取りかかってくれ。手付金は金貨で五十枚を用意した。好きに使ってくれ」


 マジか。手付けだけで金貨五十枚とか、達成したらどうなっちゃうの?


「リオ、私からはこれを。残ってた鉱石で打ったから短剣だけどね?」


 エレナもまた俺にプレゼントがあるようだ。

 手渡された短剣。いつものように鞘の装飾だけは立派である。


「ありがとう。何とか頑張ってみるよ……」


「ええ、頑張って。(変態なプレイがしたいのなら)必ず生きて戻ること」


「そうだな。輝かしい未来が待っていると信じたい。俺自身が掴み取れるように」


 そういや、俺は大槌を没収されたままだ。

 ってことはエレナの短剣で戦うしかないのか?


(それだけはねぇな……)


 支度金をもらったことだし、鈍器でも買ってから出発しよう。


「それでは侯爵様、失礼します。俺は準備をしてから狩りに向かいますので」


 侯爵様からレインボーホーンラビットの発見情報マップを受け取り、俺とエレナは侯爵家をあとにしていく。


 まあそれで、俺は高級な武具屋に寄って、鈍器を買おうとしてたわけだけど、どこまでもついてくるエレナに店を物色できないままであった。


「エレナ、俺はもう行くよ……」


 武具屋を経営するエレナを連れて、他の武具屋に行くなんてできない。何しろ、俺は彼女が打った短剣を武器として手渡されているのだ。


「街門まで見送らせて。今回の件で、私はとても心配したから。せめて王都を出るまでは一緒にいたいの」


 嬉しいけれど、そうじゃないんだよなぁ。

 俺の身を心配してくれるなら、工房に帰って欲しいのだけど。


「平気だって。何も強大な魔物と戦うわけじゃないし」


「それでも心配するわ。高溶解炉が完成するまで暇だし、見送りくらいさせてよ」


 これは詰んだ。俺の人生はここまでかもしれん。


 エレナを連れて鈍器を買うのは不可能。街を出てから戻るのもリスクが高い。再びエレナと鉢合わせでもすれば、弁明できないのだから。


「じゃあ、祈っていてくれ。直ぐにレインボーホーンラビットが現れるようにと」


「うん、待ってるね。次に会ったとき、リオの世界が変わっていると信じてるから」


 マジでヤバいことになった。エレナの短剣だけで森へと行くなんて自殺行為だ。同じ製法で作られているならば絶対に壊れる。


 つまるところ、エレナが語るように俺の世界は一変するだろう。現世を離れ、天界に召されることで……。


 まあそれで、俺はエレナに見送られながら、街門を出て行く。

 俺に与えられた武器は小枝よりも脆い短剣のみ。街門の向こう側こそが地獄と呼ばれる場所に違いない。


「ま、条件は前回と同じだ……」


 レインボーホーンラビットを狩ったのは木の棒なんだ。従って、道すがら適切な棒切れを探すべきだろうな。


「フレイムは使えないし……」


 唯一、変化があるとすればフレイムという火属性魔法。しかし、一度使用するだけで魔力切れとなってしまう。更には森林火災を引き起こすのだ。そこで意識を失った俺は、こんがり肉になるだけだろう。


「女神様、どうか俺を助けてください……」


 せめてエレナの短剣が折れませんように。何とか生きて戻れますように。


 女神様に祈ったあと、俺は長い息を吐いた。


 神頼みしか手がないなんて最悪だぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ