第028話 齟齬を来す会話
「リオ、格好悪い……」
どうやら、やっちまったようだ。
俺は嘘でもドラゴンバスター(偽)を使って倒したというべきだった。
せっかく、良い感じの会話が続いていたというのに、格好悪いと言われてしまうなんて。
「今は大きな鎚を使ってる! ほら、エレナが使ってるようなやつだよ!」
取り繕うも無駄なことだった。
棒切れよりは良いと思ったのだけど、彼女の表情はその美形に相応しくない沈んだものとなってしまう。
「鎚とか最悪……」
心をえぐるような言葉をもらう。
最悪って、それ以下がないってことじゃん?
「リオ、私は剣を掲げた英雄が好きなの。鍛冶職人には大槌が似合うけれど、英雄が打撃武器って絶対にないわ。殴り倒すとか、それこそ野蛮人よ」
「いや、今はお金もないし、武器になるものがそれしかないだけだって! 俺だって華麗に長剣を振り回したいさ!」
「本当ぉぉ?」
まぁた得意の上目遣いか。
エレナ、その目は反則だよ。たとえ心にも思っていないことでも、俺はその目に自分を欺くしかできなくなる。
「エレナが打った長剣が欲しいよ」
俺って奴は駄目な男だ。
惚れた女の願望を全て呑むだなんて。
「嬉しい! やっぱ私はお料理を頑張るわ。だけど、リオは絶対に英雄になること。そしたらリオが望むことを何だって聞いてあげる!」
それはマジですか……?
あんなことや、こんなこと。或いは、もっと凄いあんなことだって聞いてくれるのか?
いかん、鼻血が出そうだ。
二段飛ばしで考えてしまったけれど、よくよく考えると、それらの妄想は結婚するだけで叶えられるものだ。
何でも聞いてくれるというのだから、ここは結婚を申し込むべきだよな。
「よっしゃ、俺は英雄になってやるよ。ただし、俺の要求は生半可なものじゃないから覚悟してくれよな?」
これでいい。エレナの言質が取れたのなら、あとは俺が成り上がるだけ。
努力する価値があるのなら、俺は頑張れるはずだ。
◇ ◇ ◇
「俺の要求は生半可なものじゃないから覚悟してくれよな?」
えっ? 生半可じゃない要求ってなに?
てっきり結婚を申し込まれるのかと思ったけど、違うの?
ひょっとして結婚前に、爛れた身体の関係を持つってことなの!?
「エレナが何でも聞いてくれると話したんだ。約束は守ってくれよ?」
「ちょちょ、私はまだその辺りの経験が不足してるんだけど……」
「大丈夫だって。それは俺もだから……」
ああ、リオは妄想を語っているのね。
私も許嫁がいるモニカに聞いただけだから詳しくないのだけど、きっとリオも大袈裟に伝えられたプレイを真に受けてるだけだよね?
「だったら良いけど。いきなり無茶を言われても困るわ……」
「いきなり英雄になんてなれないさ。その長い期間の中でエレナには心を決めて欲しい」
心を決めるって、どういう覚悟が必要なプレイなのよ?
モニカの説明によると、慣れてくると前から後ろからだけじゃなくて、色々な攻め方をされるみたいなんだよね。
まあ、リオも貴族の男子だし、そういう妄想もすると思う。実際にリオは乱暴者じゃないし、私が傷つけられることはないはずだけど。
だったら、了承しておこうかな。
変た……いえ、高度なプレイが待っているのなら、リオは張り切って英雄を目指してくれそうだし。
「いいよ。私はそのときリオの要求に応えてあげるわ」
「あわわ、別に今決めなくても良いのだけど!?」
ほら、優しい。
リオに変態プレイなんか無理よ。ごく普通のカップルにしかなれないはずだわ。
「ふふん、リオってば口先ばっかなんだから。私の方が度胸あるかもよ?」
「いや、俺だってちゃんとできるさ! (感動して)泣いたって知らねぇぞ?」
えええ!? 私を泣かせるって、やっぱアブノーマルなやつ?
それってヤバいわ。一体リオの妄想にいる私はどういったプレイを強要されているのかしら。
だけど、英雄は色を好むって言うし、英雄になったリオがそれを求めているのなら、私は伯爵令嬢という矜持を捨てなきゃいけない。
妙なプライドが残ったままではプレイに差し障りがある。モニカも吹っ切れたあとでなら、楽しめるようになったと話していたし。
「私は(どのようなプレイでも)泣かないわ。そのとき大きな笑みを浮かべているはずよ」
「えええ!? 笑みを浮かべるって、良いのか!?」
「また口先だけなの? 私が覚悟してるんだから、リオが思うようにすればいいわ」
これでいい。
リオは話しやすいし、見た目も割とイケてるもの。
英雄になってくれたのなら、私の夢も叶う。加えて身分差までなくなるのだから、、そのとき私は彼の想いに応えよう。
「そのときを待ってるからね?」
アブノーマルでも怖くないわ。
だって、相手はリオなんだもの。たとえ、ひっくり返されたり、持ち上げられたりしたとして、基本は普通のプレイであるはず。私が痛い思いをするなんてことにはならないはずよ。
それにそういった行為は男の子がリードするものなんだから、私はリオが求める通りに動くだけでいい。
絶対に怖くなんかないわ……。
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