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第222話 一縷の望み

 聖王国にてワイバーンを借り受け、俺たちはイヴァニスの墓へと戻っていた。


 ハッピーも一緒である。

 だけど、俺たちを抱えることなく飛べたので、かなりの時間短縮が図れていた。


 何でも、墓標に力の大部分があるとのことで、聖剣に宿る儀式はこの地の他で行えないという。


「いよいよか……」


「リオ……」


 俺は腹を括っている。


 聖剣にイヴァニスが宿ることは俺の自我が失われること。俺の人生が終焉を迎えるときだった。


「さて、僕はこれから用意してもらった身体に入ってみる。リオは僕を拒絶しないで。拒絶すると余計にややこしくなってしまう」


「ややこしくなるって何だよ?」


「そのままだよ。僕と君の力が融合しないんだ。バラバラになってあらゆるものを傷つけてしまうかもしれない」


 なるほどね。

 要は俺もそれなりに力があって、俺が拒絶すると纏まった力にならないってか。


「受け入れるけど、痛くはないのか?」


「たぶん苦しむ。過去と同じであれば……」


 聞かなきゃ良かったぜ。


 ま、精神を乗っ取るのだから、簡単じゃないのは分かってる。それに覚悟だって既に決めているさ。


「聖王国ではいい夜を過ごせたし、思い残すことはない。さっさとやってくれ」


 焦らされる方が嫌だ。


 結末が決まっているのなら、ちゃっちゃと済ませてもらった方が精神的な苦痛が少ないってものだし。


「僕はリオが自我を保てる可能性を見出しているんだけどね? 簡単に諦めちゃうなら仕方ないけれど」


「ちょっと待て。それは本気で言っているのか? 過去にいたエルフの勇者は俺よりも熟練した勇者だったんだろ?」


「こなれた感じは確かにないけれど、リオの器はかなり大きい。問題は僕が馴染むまで君の精神が耐えられるかどうかだ」


「耐えられると、俺は俺でいられるってか?」


「と思うよ? しかし、僕だって二回目なんだ。分からないことの方が多い。期待半分でいてくれたら助かる」


 いやいや、期待するって。

 婚約こそしたけれど、俺とエレナはまだ挙式していない。


 やっぱ人生で最高のイベントをエレナにも体験させてあげたかった。


「リオ、絶対に生きてよ!」


 エレナが目を輝かせている。


 勇気をもらえた気がした。

 俺が生きる意味。エレナの存在は俺に前を向かせている。


「ああ、半分も期待できるなら、俺は我慢してやるよ。死ぬほどの激痛でさえ、持ち堪えてやる」


 まだ黒竜討伐という難題が残っていたというのに、もう希望しかないな。


 闇で覆われていた俺たちの未来に光が射し込んだんだ。


「あと気休めかもしれないけど、僕の身体には妙なスキルが備わっている。過去にはないものがね」


 イヴァニスが続けた。

 そういやエレナはスキル付与させることができたのだっけ。


「どんなスキルなんだ?」


「いや、分からない。何しろ固有スキルなんだ。意味が分からないよ……」


 どうやらエレナは一般的ではないスキルを付与してしまったらしい。


 一途に俺の生を願った結果として。


 イヴァニスは小首を傾げながら、そのスキル名を口にしている。


「スキル名は虚仮(こけ)の一念」


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