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第219話 残念ながら……

 僧兵二十人がかりで、石棺の蓋が外されていた。


 慎重に蓋を地面へと下ろし、中が露わとなっている。


「これは……?」


 真っ先に確認したのはバラン教皇様だった。


 既に骨も朽ちていると想像したと思うけど、中身はその予想を凌駕するものであったに違いない。


「エルシリア様、勇者イヴァニスの亡骸は何も残っていません!」


 咄嗟に彼は女神様へと声をかけていた。


 遺骨はともかく、勇者らしい装備品すら残っていないのだと。


「いえ、その折れた剣。それこそが勇者イヴァニスの真相です。かつて魔王を討ったのはその聖剣であり、リオの隣を飛ぶ大精霊こそが勇者イヴァニスの正体なのですから」


 女神エルシリア様が告げるのなら受け入れるしかないだろうな。


 世界に残る英雄譚は歪曲して伝えられたものであることを。


「光の大精霊イヴァニス、貴方はこの姿を分かっていたのでしょうか?」


「エルシリア、残念だけど僕はこの身体に戻れないよ。身体がないままリオに憑依したとして、黒竜を討てないだろうね」


 少しくらい濁して伝えてやれよ。


 教皇様が絶望されてんじゃないか。


「なぁ、俺が直せないか?」


 俺は手を挙げていた。


 聖剣イヴァニスが壊れている現状は俺の生を繋ぐものだったけど、俺はこの聖剣を直してみたいと思う。


「リオ、僕はオリハルコンで構成されていると言っただろ? 強大な炎を操る熟練の鍛冶士でないと駄目だ。もちろん、人族の人生では絶対に到達できない」


 確かドワーフの刀匠だっけ。エルフに続いて長寿の種族ならば聖剣を打てたのかもな。


「方法はある。インフェルノなら、きっとオリハルコンを溶かし、鍛造し直せるはずだ」


 勇者になってから使用できるようになった。


 恐らくは勇者のジョブ補正により、魔力が大幅に増大したのだと思う。


 それにより長く使用不可であったインフェルノが唱えられるようになっていたんだ。


「私も手伝います! これでも私は鍛冶のセンスに溢れているから!」


 エレナも手を挙げてくれた。


 聖剣の打ち直しは俺の死に直結すると分かっていただろうに。


「エレナ、良いのか? 聖剣が元通りになると……」


「リオ、私は打った剣にスキルを与えられるの。リオを取り込むなんて許さない。もっとマシな力を聖剣に与えてあげるわ!」


 何とも勇ましいことで。


 我が婚約者様は神にも匹敵する大精霊の身体を、望むように改変してやろうと目論んでいるらしい。


「イヴァニス、それで良いか? ただし、インフェルノの威力が未知数過ぎる。この大地が全て業火に焼かれる結末まで考えられてしまう」


「本当に打てるの? 僕は大歓迎だけど、生憎とオリハルコンを溶かすほどの火力を僕は抑え込めない」


 残念ながら、イヴァニスには何もできないようだ。


 良い案だと思ったのだが、事態は何も好転していない。


「勇者リオ、貴方にはレイシールドという固有スキルがございます。それを上手く使いなさい。インフェルノの業火であっても、閉じ込めることが可能でしょう」


 ここでエルシリア様が助言をくれた。


 そういや俺は勇者固有のスキルを幾つか習得していた。


 その一つであるレイシールドなら何とかできるらしい。


「レイシールドは光の盾。あらゆる攻撃から身を守ることが可能です。それを立体的に発動させるのです。聖剣を取り囲むようにして」


 なるほどね。

 自由自在に展開できる光の盾でオリハルコンを取り囲むってか。


 その中にインフェルノを撃ち込めば、溶解させることができると。


「まずはレイシールドの練習から始めなさい」


 何と女神様が見守る下で俺は練習することに。


 取り出された聖剣を包み込むようにレイシールドを展開していく。


「レイシールド!!」


 まあしかし、上手くいくはずもない。

 基本的に平面であるそれを形にするのは難しかった。


「頭にイメージを。そこの棺と同じ形状を思い浮かべるのです。リオならば必ず構築できることでしょう」


 信頼は有り難いね。

 ならば俺は期待に応えるだけだ。


 絶対に習得をして、聖剣を打ち直してやる。


 このあと俺は何時間と練習をし、遂にはエルシリア様から許可を得られている。


 いよいよ大詰めだ。


 俺は聖剣を打ち直して、この人生を終える。


 英雄として最後の使命を遂げようとしていたんだ。


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