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第217話 覚悟の形

「エレナ、俺は勇者になったんだ」


 流石にエレナは面食らっている。


 ハッピーに土下座していた住民たちも一様に。


「リオが勇者様に……?」


「ああ、先ほどの魔法は勇者の固有スキルらしい。それを使ったからか、エルシリア様は強引に俺を勇者としてしまった」


 正直にまだ勇者の資質を満たしていないと思う。


 だけど、エルシリア様は俺の覚悟を引き換えとして、世界を救う力を俺に与えていた。


「リオ、僕は懐かしい力を感じているよ。かつていた彼も今の君と同じ雰囲気を纏っていたのを思い出している」


 ま、そうだろうな。


 ようやくイヴァニスが憑依できる身体になったんだ。彼が懐かしく感じたとして間違いではないだろう。


「いよいよ、聖王国へと急がなくてはならなくなった。俺は勇者になった折、プロメスタ聖王国へ戻るようにエルシリア様から聞いている」


「私は嫌だわ。リオが犠牲になるなんて」


「まだ分からん。ちゃんと話を聞いてみないことには……」


 ま、俺は既に諦めているけどな。


 無理な願いを聞いてくれたエルシリア様は俺の覚悟を知った。


 現状を導いたのは俺の意志であって、世界を救うことは既に俺の使命なんだ。


「リオ、もしもリオが世界のために失われたら、私はあとを追うわ」


 ここで望むはずもない話を俺は聞かされてしまう。


 エレナは婚約者である俺と常に一緒であるという。


「そんなこと俺が望むとでも?」


「私が望んでる。仮に世界が救われたとしても、私の幸せはそこにない。貴方と添い遂げる意志が私には強く存在しているから」


 真っ直ぐに俺は見つめられていた。


 エレナは本当に頑固で真っ直ぐな人だ。

 おかしな思考をすることもあるけれど、俺を受け入れてからは俺しか見ていない。


 だから、彼女の意志を曲げる方法なんて、俺には思いつかないんだ。


「分かった。死後は天界で幸せになろう」


 これで良いのだろうか。

 全てが上手く行くのだろうか。


 俺とエレナはこの世を去り、アヴァロニア世界に平穏が戻る。


 果たして、それは幸せなんだろうか。


「お爺さん、俺たちはもう旅立ちます。井戸水も心配ないと思う。何とか力を合わせて生き抜いてください」


「勇者様、どうか世界をお願いしますのじゃ! ワシらはともかく、子供たちの未来をお願いしますのじゃ……」


「ええ、任せてください。俺はアヴァロニア世界を救う勇者です」


 まるで身の丈に合っていない願いを俺は承諾している。


 だからこそ、抱いた思いを口にするだけだった。


 既に覚悟は決まりましたから──と。


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