第213話 旅の途中で
ハーピーがエレナを抱え、俺が背中にしがみ付くことで空の旅が始まった。
「女、わたしは殿方を弄りたかったというのに」
「伝わってないから無駄だぞ? エレナに何かしたら翅をもいでやるからな?」
「そんなプレイを!?」
「喜ぶんじゃねぇよ!!」
ずっと、こんな調子だ。
かなり変態であったけれど、ハーピーは俺たちを北へと運んでくれている。
「あれは……?」
アレスタ山脈を越えた先。そこに広がるのは元帝国領の中心地であった。
俺が驚愕した理由は一つ。
そこにあったはずの街だけでなく、山や丘が完全になくなっていたんだ。
「これは酷い……」
「リオ様、あの化け物はこの世の理に反しておりました。距離がある我らの巣でさえも、あの有り様なのです。間近で暴れたのであれば、全てが消失したと思います」
ハーピーは語る。
実際に攻撃を受けた彼女は帝国の惨状を分かっていたかのよう。何も残っていないのだと知っていたみたいだ。
「そうだな。亡くなった人たちの冥福を祈ろう」
背中にしがみ付く俺は手を合わせられない。
しかし、心の中で人々が迷わず逝けるようにと願っていた。
二大国と呼ばれた帝国領。一日中飛び続けた今も、眼下には荒れ果てた大地が拡がるだけだ。
「リオ、あそこに人がいるよ!」
不意にエレナが声を上げる。
よく見ると瓦礫が残っていた。南側のエリアは建物も完全消失していたけれど、少なからず町の痕跡が残っており、生きた人たちの姿があったんだ。
「ハーピー、降ろしてくれ」
「承知しました」
別にテイムしたわけでもなかったのだが、従順なものだ。既に俺の命令は絶対になっている感じ。
離れた場所に降ろしてもらい俺は駆けていくことに。
だが、エレナとハーピーも後を追いかけてくる。
「待て! ハーピーはここにいろ! 魔物被害に遭ったばかりだ。生存者が怯えてしまうだろ?」
「でも、わたしは無害なハーピーですよ?」
実際に害はなくてもな。
特にオッパイがポロリしてるし。
「そいや、毛布があったっけ」
問答するのも手間であるし、俺はマジックバックから毛布を取り出した。
「これを羽織れ。下半身を隠せ。胸は出すなよ?」
「承知しました。胸はリオ様が独占したいと……」
「ちがぁぁう!!」
こいつはハーピーじゃなくて、サキュバスなんじゃねぇの?
下ネタばっかだし。
「まあいい、救助に向かうぞ」
俺は難民と化した彼らを救うつもり。
ジョブが神職者なんだ。
ヒールくらいしか唱えられないけれど、何かの役に立つのではないかと。




