第211話 雑談のあと
オークキングに案内され、俺たちは山道を歩いていた。
「おい、この辺りはヒュドラの脅威に晒されていなかったのか?」
道すがらヒュドラについて聞く。
ハーピーの住処は山の頂上らしく、まだ先であるらしい。
「へい、異様な気配は感じましたが、目立った被害はありやせん」
なるほどな。
確かに今いる場所は山を二つばかし越えたところだし。アレスタ山脈でも割と北に位置しているんだ。
「ねぇ、リオ。この魔物は何て言っているの?」
エレナには俺たちの会話が分からない。
一応はスキルの説明と併せて目的を伝えていたけれど、オークキングはデカすぎるから信用しきれていないのかもしれない。
「ヒュドラの脅威はこの森まで届かなかったってさ」
「なら黒竜は見なかったのかしら?」
そういや、黒竜について情報を集めるべきかもしれない。
俺はまだ戦える状態にないけれど、どこへ向かったのかを知りたいと思う。
「オークキング、お前は黒竜を見ていないか? 巨大な黒い飛竜なんだが……」
「そそそ、それは数ヶ月前の化け物っすか!?」
急に声を震わすオークキング。どうやら彼は黒竜を知っている感じだ。
「ああ、それだ。知っているのか?」
「知ってるも何も、北で巨大な爆発を起こしたあと、凄い勢いで南に飛んで行ったんですよ!」
爆発に関しては分からないけれど、ここから北に位置するのはヴァルノス帝国の中心地だ。帝国は既に滅亡したと聞くし、恐らく強大な火球でも吐いた結果なのだろう。
「イヴァニス、黒竜は南に向かったらしいぞ?」
「南か。墓標の周辺には気配を感じなかったね。一体どこへ向かったのやら」
「気配は察知できるのかよ?」
「眠っていたから、かなり近付いてこないと無理だ」
そりゃそうか。
イヴァニスは霊体だし、俺はパラディン。出会わなくて良かったと考えるべきだろう。
「しょうがない、ハーピーを使って、さっさとプロメスタ聖王国へと向かおう」
このまま歩いて北上したとして、数ヶ月はかかってしまう。
現状は帝国の中心地よりも遙か南。山道でもあるし、空の旅ができるのなら時間短縮になるはずだ。
「あっ! 見えてきやしたぜ?」
オークキングが指さす。その先には木々が生えていない岩山があった。
オークキングによると、ハッピーは基本的に鳥であるらしく、岩場に巣を作っているのだとか。
「実はハーピーで繁殖しようと考えていたんでさ!」
えっと、マジかよ。
流石はオークといったところか。
「だけど、相手は鳥だろう?」
「上半身は女ですからね? 兄貴もお楽しみしやすかい?」
エレナに聞かれていたら、去勢されているところだ。
さりとて、上半身が女性だからといって下半身が鳥なのは無理だ。翅もあるし俺の趣味じゃないって。
まあそれで俺としては性癖的に安心していたのだけど、オークキングは気になる話を続けるのだった。
「魅了を使いますのでお気を付けて!」




