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第021話 誇りに感じて

 日が落ちた頃、王都に到着した俺は弾むようにして武具工房スミスへと戻っていた。


「おお、戻ったか」


「リオさん、お疲れさまでした」


 二人はやはり心配していなかったみたいだ。まあ、焔の祠にドラゴンが湧いたなんて知らないだろうし。


「何とかフレイムを授かって来ましたよ!」


 早速と習得した魔法を口にしている。他にも三つあったけれど、使えないので伝える必要はないと。


 ところが、二人揃って目が点になっている。

 俺って何かマズいことでも言った?


「リオ、精霊様がそれを授けてくれたのか?」


 師匠は確認するように聞く。


 その通りだけど、何が問題なんだ?

 頷く俺にドルース師匠が続けた。


「フレイムはファイアーの上位魔法だぞ? 上級魔法使いでも唱えられないものだ。普通はファイアーを授かるはずなんだが……」


 マジなの?

 フレイムじゃ鍛冶に向かないってことなのか?


「フレイムでは火力を出せませんか?」


「いやいや、上位魔法だと言っただろ? 弱い火力を出すには熟練が必要だろうな。何しろフレイムの熱はファイアーを軽く凌駕する。最大火力を出してしまえば、高溶解炉どころか工房全体が破壊されてしまうはずだ」


 どうしたら良いのだろう?

 あの大精霊はとんでもない魔法を俺に授けていたのかもしれない。


 他に習得した魔法は現時点で使用できないものばかり。きっとフレイムどころの騒ぎではないはず。


「まあでも、街門の外で練習あるのみだ。使うほどに微調整できるようになる」


 続けられた説明にとりあえず安堵していた。


 せっかく手に入れたんだ。使えるかどうかが俺次第であれば、努力するだけでいい。


「分かりました。鍛冶の特訓と併せて、努力してみます」


「リオさんって真面目ですね? 頑張ってください!」


 ドワーフから産まれた奇跡のエルフことルミアに応援されては頑張らないわけにはならない。俄然、やる気が出てくるってものだ。


「師匠、俺はこれで鍛冶に専念できますか?」


 確認しておかないとな。他にもスキルが必要ならば、俺は習得してみせる。サラマンダー曰く、俺は幸運に恵まれているらしいし。


「欲を言えば、風魔法もあった方が良いが、それはワシも持っておらん。風を送る道具はあるし、気にしなくてもいいだろう」


 風魔法とか覚えていないけれど、師匠も持っていないのだから問題なし。明日から俺は鍛冶修行に打ち込めるというものだな。


「夕飯の準備はできてますよ? リオさん、早く中に入ってください」


 まるで新妻のようだ。とはいえ、悪い気はしない。

 美しい女性にもて成されるというのなら、気分を害する男などいないってものだ。


「ありがとう……」


 俺は今日、本当に一人の男として自立したような気になっている。


 ようやく鍛冶士としての人生が始まるんだ。期待感で胸が高鳴って仕方がない。

 また、それはエレナのためという前提があったけれど、俺は本気で鍛冶士を目指しても構わないと思えていた。


 初めて他者に認められたこと。

 俺はとても誇らしかったんだ。

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