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第209話 納得したようで……

 イヴァニスから聞いた話は衝撃的な内容だった。


 共通しているのは世界も女神も存続を願っているという話だ。


「闇の大精霊はどうして魔王になったんだ?」


「さあね。闇はきっと僕に嫉妬していた。人々に賞賛される僕を羨んでいたのさ」


「嫉妬とかで世界を破滅させようとしていたのか?」


 大精霊が何を考えているのか分からないけど、世界が滅んでしまっては意味がないと思う。


「厳密に世界が滅びるわけじゃないさ。女神の使徒が死滅するだけ。再び原初の世界に戻るだけだよ。僕を賞賛する人たちを魔王は排除しようとしたのだろうね」


 どうやら精霊たちにとって、三種族が滅びることは大した意味を持たないようだ。


「お前はどうして女神様に手を貸した?」


「世界が望んだからさ。世界は女神エルシリアが望む発展に期待した。だから僕が相反する闇の大精霊を討つことになったんだ。互いが互いに苦手とする相手。けれど、唯一の対抗手段が僕だったわけさ」


 思えばイヴァニスが物質であったこと。それが三種族をも巻き込む戦いになった原因だろう。


「てめぇが生体だったなら、勝手に戦ってもらえたのに……」


「まあそうだね? だけど、ドワーフの刀匠が僕を打ったのは世界と女神が望んだ結果さ。女神の使徒たるドワーフが世界の使徒たる僕を作り上げる。この時点で同盟は決定していたといっても過言ではない」


 そういうことか。

 大精霊が単体で戦うとなれば、女神エルシリア様に仕事はない。


 世界を守る仕事を請け負わない俺たちは単なる居候でしかなくなるんだ。


「闇を完全に排除などできない。魔王を排除したとして、光は必ず闇を生み出すから。もう闇の大精霊なんてものを世界は生み出さないだろうけど、概念的な闇は必ず存在する」


「概念とか難しいこというなよ?」


「そうでもないよ。概念的な闇が拡がれば、人の世は乱れる。人が人を殺し合う様も概念的な闇だよ。災禍級の闇を葬ったからといって、排除しきれるものじゃないってことさ」


 要は悪人たちも闇に呑まれているってことか。


 それならば完全に排除できない理由も分かる。笑顔の影に涙があるように、幸運には悲運が潜む。光と闇は世界の二面性そのものなのだろう。


「だけど、イヴァニス様、リオは私にとって大切な人なんです! 貴方様だけで何とかしてください。私は協力できませんから!」


 俺のエレナさんはつえーな。


 大精霊相手に一歩も引き下がらないなんて。半ば諦めていた俺とは異なる。


「僕だって、生を奪いたくないよ。だが、エルシリアは多数を救うために個の犠牲を考えているんじゃないか? まあリオの魂は死後も丁重に扱われるだろうし、何より英雄として語り継がれる存在になるだろう。此度の僕は既にリオの名前を知っているし」


 イヴァニスは自信満々に答えたけど、俺のエレナが頑固だとは知らないみたいだ。死後の話で納得する彼女ではない。


「私はずっとリオと共に生きたいのです! 死後の話など私には関係ございません! もしも世界が滅びるのなら、彼と共に逝きたいです」


「エレナ、君もエルシリアの匂いがする。彼女が選んだ人だと思うけど、反対するのかい?」


「大反対ですわ! 世界が滅びるのなら、皆が平等であるべき。リオだけが犠牲となるなんて理不尽です」


「なるほど、それは一理あるな……」


 すげぇ。エレナはイヴァニスを言い負かしてしまった。


 もしかすると俺は使命から逃れられるのだろうか。


「よし、ならばこうしよう。世界が滅びる場合は等しく失われる。世界が救済されるのなら全員が生き残る。これで、どうだい?」


「それなら賛同できますわ。大いに結構です」


 それができないから、現状に至っているというのに。


 イヴァニスは恐らく嘘を付いている。そんな簡単な話であれば、過去のエルフも死ぬ必要はなかったのだ。


「とりあえず、その方向で頑張ってみようか。黒竜という存在についても知りたいし、エルシリアに会いに行こう」


 俺は同意した振りをしている。


 反論したところで振り出しに戻るだけだと分かっていたからだ。


 調査に来ただけなんだけど、俺たち三人の旅が始まろうとしている。


 俺は再び、約束の地へと赴くことになるらしいな。


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