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第205話 マジな話?

「僕は光の大精霊イヴァニス」


 え? いや、ちょっと待って!


 イヴァニスって確か魔王を討った勇者の名前じゃなかった?


「勇者も同じ名前だったかと……?」


 俺は問いを返している。


 この妖精染みた大精霊がイヴァニスであるのなら、神殿に祀られた勇者は誰だって話だ。


「勇者? それは誰なんだい?」


 惚けているのかな?


 魔王と戦ったのはイヴァニス。この大精霊も魔王と戦ったと話してたし、同一人物かもしれないのに。


「いや、プロメスタ聖王国の神殿に勇者イヴァニスが祀られているんだよ。女神エルシリア様がそう話していた」


 俺は勇者イヴァニスこそが魔王を討った者だと付け加えている。


 別人であれば良いのだけど、何体も魔王がいるはずもないよな。


「エルシリアがそんなことを?」


 イヴァニスは女神様を知っているようだ。


 更には敬称すら付けていない。やはり大精霊は神に近い存在なのかもしれない。


「恐らく、僕の身体があるのだろう。魔王は死に際に爆発したんだ。魔の力を全て解放してしまった。光の属性である僕は闇に対して有利であり、無力でもある。従って、自爆にも似た攻撃にて存在を失ったのさ」


「いやいや、待てよ。存在を失ったって、神殿に安置されてんだろ? 肉塊になったってことか?」


「そもそも認識が異なっているね。僕はそうだな……」


 悲惨な末路を想像していた俺だが、それは根本的に間違っていることを指摘されていた。


「意志を持った剣のようなものだ」


 剣だって? いや、そんな馬鹿な。


 神殿に剣が祀られているってことかよ?


「エルシリア様はイヴァニスのジョブが勇者だと言ったんだぞ? 俺が勇者になった際に、神殿を訪れろとも。それが剣だったなんて納得できん」


「確かに僕はブレイブソードとも呼ばれたけど、間違っても勇者じゃない。強いて言うならば、勇物だね。アハハハ!」


 上手く言ったつもりかもしれないけど、笑えねぇよ。


 俺は存在しない勇者というジョブになれと命じられているようなものじゃないか。


「まいったな。勇者にならなきゃいけないってのに……」


 ふと思い出す。そういえば勇者イヴァニスの話には続きがあった。彼はやはり存在していたと思えてならない。


「おい、かつての勇者は僧侶からパラディンになり、勇者に昇格したって聞いたぞ? やっぱお前とは違うんじゃないか?」


 間違いない。

 勇物が勇者を語るな。イヴァニスは別に存在しているんだ。


「パラディン? ああ、エルシリアの使徒だったかな?」


「知ってるのか!?」


 いよいよ俺が知りたい情報かもしれない。


 早く話せ。俺はどうやったら勇者になれんだ?


「知っているも何も僕を扱える唯一の人だった。彼が勇者だったのか?」


 的を射ない質問返しだ。


 だったのかじゃねぇよ。だったんだよ。


「俺はそう聞いている。その彼は何者なんだ?」


「僕はよく知らない。何しろ、僕は彼の身体を乗っ取ったからね」


 とんでもない話を聞かされている。


 世界が迎える結末。そこに俺がどう関与するのか。


 或いは俺だけが迎える悲劇について。


「彼の意識は先に天へと還った――」


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