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第204話 どういうこと?

 俺とエレナは祠に向かって歩いていた。


 兎にも角にも、メガバーストの威力。


 既に炎というより爆発に近い。効果範囲は確実にヒートストームを下回っているけれど、その威力は段違いだと思う。


 なぜなら、消火活動が必要であった白い炎は全て消し飛んでおり、そこにあった山が一つまるごとなくなっていたからだ。


「インフェルノとかどうなっちまうんだよ……」


 俺にはまだ一つ魔法があったんだ。


 もしも、それを唱えた日には大陸が消失したとして不思議ではない。何しろ威力は倍々に上がっていたのだし。


「やっぱ炎の祠じゃないの?」


 到着した祠。本当に見覚えのある形をしている。上部に刻まれた紋は違うような気がするけれど、同じような試練である可能性は高い。


「よし、俺が入ってみる。周囲には魔物はいないけど、エレナは警戒していてくれ」


「一人で大丈夫なの?」


「試練であるのなら一人しか入れない。俺は更なる力が欲しい。いざというときエレナを守れないなんて嫌なんだ」


 俺の返答にエレナは顔を赤くしている。


 もっとも彼女ですら強者であったけれど、やはり女の子は守られたいのかもしれない。


「南部にも試練があるのなら、雷や氷の可能性があるだろ? ガラムは雷氷の大賢者と呼ばれているし、何かしら授かったことがあるんじゃないか?」


「そういえばそうね。ガラム様の稲妻は凄かったし」


 エレナも納得した感じだ。


 やはり炎の魔法だけでは不十分。弱点属性で攻められるように、俺は対極にある氷の魔法を手に入れたいと思う。


「じゃあ、行ってくる」


「気を付けてね!」


 俺は祠に手をかざす。すると、記憶と同じように、俺は内部へと吸い込まれていく。


 やはり試練の祠であるのは間違いないようだ。


「慎重且つ迅速に」


 エレナであれば下手なことにはならないだろうが、何しろ彼女はノーパンなのだ。


 英雄紛いの強者が現れ、俺のエレナを襲わないとも限らない。


 超絶美少女たるエレナのスカートが捲れてしまえば、如何に聖人であろうとも性人と化してしまうはずなんだ。


「同じ構造なのか?」


 祠の中は一本道であった。記憶と大差ない。ここが炎の祠だと言われたら信じてしまうくらいに。


「やっぱ祭壇があるな」


 ここまで魔物は湧いていない。試練だと思ったけど、呆気ないものだ。


 俺は祈りを捧げる。こうすることで精霊が応えてくれるだろうと。


 しばし待つと、祭壇が輝きを帯びた。


 サラマンダーは赤い光の粒を発していたけれど、此度の色は黄色。ひょっとすると雷の色なのかもしれない。


「やあ、初めまして……」


 現れたのは黄色に輝く妖精だった。


 まあでも、仮の姿であるのは明らか。俺は現れたのが精霊だと知っている。


「お前は何の精霊だ?」


 俺の興味はその一点のみ。


 火の精霊だというのなら用事はない。俺は新たな攻撃手段が欲しいだけなんだから。


「見て分からない? 僕は光の大精霊だよ。長きに亘って眠っていたんだけど、君が起こしてくれたんだね?」


 起こした覚えはないが、メガバーストが目覚めに繋がったのなら俺のせいだな。


「光の大精霊とか初めて聞くぞ? 火とか水とか、あとは派生した属性の雷とかなら知ってるけど」


「そんな下位の精霊と同じ括りにして欲しくないな? 僕はかつて魔王と戦ったんだ。まあそれで暗黒素を浴びてしまって、この通りさ。僕の死骸に入ってくれたのは君が初めてだ」


 何とも難解な話だ。


 さりとて、魔王とか暗黒素は俺も聞いている。黒竜が目覚めた原因こそ、暗黒素であったはずだ。


「死骸? ここは祠だろうが?」


「君たちはそう呼ぶのかもね。大精霊は死ぬとこうなる。土地がその属性で満たされたら、祠と呼ぶものになるんだ」


 ここって、いわゆる墓なのか?

 そう考えると不気味にも感じる。


「俺たち人族には魔法を授かる試練だと伝わってんぞ?」


「間違ってない。僕たちは気に入ったものには何かしてあげたくなるんだよね。だけど、祠には魔素が充満し、属性で満たされている。だから同属性の魔物が湧きやすい。何かしてもらうには魔物を倒して会いに来なければならないのだから」


 なるほどね。そんな感じなら試練といえなくもないか。


「じゃあ、全ての祠は墓場ってか?」


「かつて大精霊と呼ばれたものたちは全てが肉体を失ったんだ。その折に大地へと根付いた。まあしかし、僕たちは霊体となっても、属性を撒き散らすからね。精霊や妖精が集まってくるんだ。たぶん僕は最後に死んだと思う」


 サラマンダーも元の姿は空飛ぶ火トカゲだと話していた。それって実体があった頃の姿なのだろうな。


 光の大精霊は纏まりつつあった俺の思考を振り出しに戻すような話を続ける。

 

 かつて勇者と呼ばれていた者の名を口にするのだった。


「僕は光の大精霊イヴァニス――」


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