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第191話 因果応報

 喫緊の問題であったというのに、俺たちはマルコス侯爵邸に招かれていた。


 豪華絢爛とは、まさにこのこと。贅の限りを尽くした部屋に俺たちは通されている。


「何てこった……」


「リオ、食事くらい良いじゃないの? 詫びであると話されていたし」


 全てを信じるなら、そうだろうな。

 だけど、俺は言いがかりを受けた経験があった。従って、飯を食ったら即座に出発するつもりだ。


「さあ、どうぞ! ちょうど昼食時でしたので、お待たせすることもありませんでしたね」


 今のところは問題なさそうだ。

 テーブルには大量のご馳走が並べられ、持て成す感じが見て取れる。


「ところで、お三方は王命により辺境の地で増殖したバジリスクの討伐に向かわれておるのですよね?」


 食事を取りながらマルコス侯爵。通行証にも明記されていたことを確認している。


「ええ、そうです。ただ辺境伯領だけの問題ではありません。確認されているだけでも二十頭以上、侯爵領にも被害が出る可能性は高いかと」


 隣接しているのだ。遠く隔たっているのならまだしも、陸続きである侯爵領が絶対に安全だとは言えないはず。


「あの僻地は取り潰しにすべき。迷惑しているのですよ。事あるごとに魔物がここまで流れ込む。全てはあのご老人のせいだと思いませんか?」


 俺はナイフとフォークを置いた。


 やはりマルコスは好意的に俺たちを捉えていない。口調からは嫌悪感が漏れ出していたんだ。


「辺境伯がいるからこそ、魔物被害が少ないのです。その辺りを履き違えられては困りますね」


 俺はもうヘタレじゃない。

 自分の意志でもって返答するくらいできるっての。


「バジリスクくらい我が私兵であれば、瞬く間に殲滅しますよ。それが問題になってしまうのは辺境伯にその素養がないから。残念ですが、バジリスクの被害によって、あの僻地には滅んでもらいましょう」


 言って席を立つマルコス。彼の思惑は、俺にも直ぐ理解できた。


「俺たちを足止めしようってのか?」


「ええまあ。しかし、王国のためです。あの翁が政務大臣とか国が傾く。私は王陛下が決断しやすいようにするだけですね」


「俺たちは出て行くぞ? たとえ、この邸宅を全焼させてでも……」


 俺には魔法がある。それに武器だって隠し持っているんだ。

 閉じ込めたとして、無理矢理にでも出て行くだけだぜ。


「良いのですか? 貴方たちが入領し、昼食に招いたことは記録として残しております。万が一、私の家屋に傷でも付けようものなら、貴方が酒を呑んで暴れ回ったと王城へ報告いたしましょう」


「それで脅したつもりか? こんな今も罪のない領民が襲われているかもしれないんだぞ?」


「知ったことではありません。邪魔な者を排除するだけ。僻地の領民になってしまった運命を恨むしかないですね。ちなみにクリスタルによる録音はできませんよ? 私も学んでおりましてね。この部屋にはアンチマジックの術式が施されております」


 全て計画通りってか。

 どうやら俺たちが王城を発った情報は逐一受けていたようだな。政務に復帰するために、ガラムを排除するつもりらしい。


「アンチマジックとか俺の魔法には効かねぇぞ?」


「破壊するならしてください。その方が色々と捗りますから。では、ごゆっくり……」


 俺は駆け出していた。

 施錠されてしまえば、マルコスの思うつぼだ。


 だからこそ、俺は奴の腕を掴む。


「何をする!?」


「それはこっちの台詞だぜ?」


 本音を言えば、ぶった斬ってやりたいが、こんな奴でも上位貴族なんだ。手荒な真似をするのは悪手に違いない。


 ところが、俺の行動は結果的に必要ないものとなる。なぜなら、マルコスの私兵が現れて、緊急事態を告げたからだ。


「マルコス様、街にバジリスクが現れました!」


 あり得ない報告だった。

 街門を閉めていたのなら、バジリスクが入り込むなんて考えられない。どうやって進入したのか不明である。


「対処しろ! どこから進入した!?」


「それが足のない個体でして、街門を登り切ったようです。しかも、五体が現れ、猛毒を撒き散らしております!」


 俺が聞いていた話と少し異なる。

 確かバジリスクは上位の存在らしく、四足歩行すると聞いていたのだ。ま、猛毒については同じだったけどな。


「何とかならんのか!?」


「既にパニックとなっております! 兵も大多数が犠牲に……」


 賑わっていた街は一転して地獄と化したようだ。


 ま、俺たちには関係のない話だな。俺はエレナとエマに目配せをして、二人を連れて出て行くだけだ。


「じゃあな、侯爵様……」


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