第186話 卑猥すぎるな
王都セントリーフを発った俺たち三人。南街門から街道をずっと下がっていく。
途中で東側に曲がって、直進するとそこがスノーウッド男爵領。
男爵領と南北を結ぶルーラー街道を南下していけば、問題のウェイル辺境伯領であった。
「リオぉぉ……」
それで俺はずっとムラムラさせられていた。
前に座らせたのは俺の判断だけど、エレナは常にイチャイチャしてくる。キスだけで我慢するなんて、身体に悪すぎるぜ。
「リオの婚約者は本当にイラッとするわね?」
まあそれでエマもまたエレナの攻撃余波を受けている。
まるでエマに見せつけるように、エレナはイチャついているかのようだ。
「そういうなよ。エレナは新婚旅行気分なんだ。夜に少し離れても良いか?」
「あら? もう童貞じゃなくなったの?」
ふはは、残念だが俺はもうヘタレのリオじゃない。
何回も経験してるし、間違うこともないんだぜ?
「そういうことだ。気を利かせてくれよ?」
「目の前ですれば良いじゃん? 離れると危ないわ」
「お前なぁ、そういうわけにもならんだろ?」
「娼婦なら幾らでもそんな状況を経験してるわ。一度に五人とか買っていく人もいるし」
マジですか。
一度に五人と戦うとか、その人って絶倫なの?
めっちゃ漢じゃんか。
「俺はそんなの嫌なんだよ。そこまで離れないから良いだろ?」
「ま、好きにすれば? あたしも良いことしちゃうし」
えっと、それは何だ?
疑問を覚えたけれど、深く聞いてはいけない話だろうな。何しろ、エマがすることだし。
そんなこんなで初日は魔物に遭遇することがなかった。
現状の街道は封鎖された道ではないし、定期的に騎士団員が魔物駆除をしているからだろう。
そして、お待ちかねの夜。俺たちは三人で夕食を食べたあと、二手に別れる。
俺とエレナは岩山の影へと二人して来ていた。
「リオ、こんなところで……」
「いや、エレナが煽るからだぞ?」
昼間に溜め込みすぎた。
スッキリしないことには眠れるはずがないって。
すると、どこからともなく、
「あっ……ぁっ……」
艶めかしい声が聞こえてきた。
断じてエレナじゃない。加えて俺でもなかった。
想像していた通りのことをエマがおっぱじめているらしい。
「エレナ、気にするな。あいつは盛大にぶっ飛んでいるんだ。気にするなんて無駄なことだぞ?」
「う、うん……」
野外で自己発電とかあり得ん。しかも女であるというのに。
兎にも角にも、俺たちは三人共が発散できている。
何か間違っている気もするけれど、この調子なら長旅も問題あるまい。
少しばかり卑猥ではあったが、俺たちの旅はまずまずの滑り出しを見せていた。




