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第180話 緊急事態

 一ヶ月が経過していた。

 相変わらず、王家からの任務はなかったので俺はずっとスミスで生活している。


 一週間に二度ばかりはエレナの部屋に外泊したりして。


「リオさん、朝から鼻の下を伸ばしてだらしない……」


 ルミアは割と冷たい対応を続けている。


 ご飯は作ってくれるけど、どうにも距離が遠い。なぜだか分からないが、俺は彼女の機嫌を損ねているみたいだ。


 俺とエレナの関係は二人に伝えてある。

 婚約前提であることも、俺は口にしていたんだ。


 朝ご飯を食べてから、作業着に着替えようというところで、


「すみません!」


 どうしてか昼からの修行当番であるエレナが工房へとやって来た。


 師匠が対応してくれるけれど、何やら俺に用事があるらしい。


「エレナ、どうしたんだ?」


 流石に工房で顔を合わせると恥ずかしいな。


 彼女が工房まで会いに来るなんて、滅多にないことであるし。


「ドルース師匠様、本日はリオと私の修行を取り止めにして欲しいのです」


 んん? 俺に用事なのは間違いない感じだけど、修行をしないってどういうことだろう。


「むぅ、デートでもするのか?」


「そうじゃないです。実はお父様の迎えの馬車が来てしまって。リオとの顔合わせというか……」


 マジなの?

 一言も聞いていないけど、顔合わせするの?


「エレナ、俺は衣装とか作ってないぞ!?」


「大丈夫よ。服は用意したから。お母様がようやく王都に到着したから顔合わせしようって言って来たのよ」


 何てことだろう。心の準備ができていないっての。


 そもそも俺はご両親の許しをもらえるのだろうか。


「師匠、俺の人生における最大の山場です。今日の修行は取り止めにしてください」


「うむ。めでたい話になると良いな。リオならば確実に受け入れられると思うが」


 有り難いことに師匠は許可してくれた。急な予定であったけれど、俺たちの未来を願ってくれている。


「リオさん、もし断られたら、あたしがもらってあげますからね?」


「怖い冗談言うなって。マジで焦ってきたよ」


 ぶぅっと拗ねたような声を出すルミア。どうやら彼女は俺の緊張を紛らわす冗談を口にしてくれたみたいだ。


「それでは行ってきます!」


 師匠たちに礼をしてから二人して工房をあとにする。


 俺の服は極秘裏にエレナが仕立ててくれたようで、クローゼットに隠してあるらしい。


「エレナは知っていたんだな?」


「以前にお父様が来てさ、リオに会わせろとうるさいのよ……」


 どんなお父さんなんだろうな。怒られなきゃいいけど。


 二人して裏口から入る。何だから新婚夫婦みたいだ。

 朝っぱらから一緒に行動するなんてさ。


「これよ! 絶対に似合うと思うわ」


「おおっ! 高かったんじゃないか?」


「リオにお金をもらったでしょ? 充分に足りたわ」


 俺は割と王様から報酬をいただいたので、エレナが鉱石を買ったりするお金を手渡していた。何でも彼女は食費を削ってまで鍛冶をしていたみたいなんだ。


 見せてもらったのはタキシード。上等すぎる生地で仕立てられていた。


「早速着替えましょ。御者を待たせたままだし」


 本当に急すぎるよな。

 とにかく、いち早く向かってお父さんを待たせないようにしないと。


 俺は大雑把に服を脱いで、着替えを始める。

 まあそれで、どうしてかエレナもクローゼットで着替えを始めたんだ。


「うぅ……」


 何度もスケベなことをしたけれど、やはり興奮する。


 何だか最近は可愛いだけじゃなくて、色気が増したような感じなんだよ。


「リオのエッチ……」


「いや、普通見るだろ? 愛する人の着替えなんだし……」


「何だったら、抱いておく? スッキリした方が良いんじゃない?」


 下着姿のエレナから魅惑的なお話が。


 だが、ここは調子に乗るべきじゃないな。今からご両親と会うってのに賢者モードでは心象を悪くしかねない。


「帰ってきてからが良いかな? やっぱエレナは素敵すぎる」


「いいよ。問題ごとを片付けてからだね?」


 言ってエレナは俺にキスをした。


 いやもう、ラブラブじゃね? 俺たち完全にラブラブラブだってば。


 過度に興奮しながらも、俺たちは着替えを終えた。


 ならば向かうとしようか。

 絶対に勝利して戻ってくるんだと決意を固めながら。


 それこそ、まるで魔王城へと攻め込むかのように。


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