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第179話 愛を込めて

 俺は有頂天になりながら、鍛冶工房スミスへと戻っていた。


 ダメだ。良すぎた。

 エレナが可愛すぎた。


 過剰に可愛い成分を摂取しすぎた罪で投獄されかねない。


 それだけ俺は幸せだったんだ。


「エレナ……」


 思い出すだけで下半身に血流が……。


 いやいや、今から鍛冶の修行なんだ。煩悩を持ち込んではならないと思う。


「いやでも、脳裏に焼き付いちゃって……」


 朝から至福の時間過ぎるぜ。

 ヘタレな俺を誘ってくれたエレナに感謝だ。


 男になれたのはエレナのおかげ。

 愛し合うって、やっぱ凄いことだよな。


「すみません!」


 俺はウキウキでスミスの扉を開く。


 カウンターには驚いた表情のルミアがいた。二ヶ月も音沙汰がなかったのだから、やはりビックリしたんだろうな。


「リオさん、やっと戻ってきたんですか!」


「んお? リオじゃないか! よく戻ったな!」


 二人は家族のように迎えてくれる。


 煩悩まみれであった俺だけど、一瞬にして素に戻れていた。喜んでくれる二人に煩悩は浄化されていたんだ。


「トラブルがあって遅くなりました。今日からまたよろしくお願いします」


 実をいうと昨日から入れたのだけど、ちと用事がありましてね。


 おかげで一回り大きくなった俺が現れたってわけですよ。


「さっそくミスリルの大剣を仕上げていきます」


 まあ俺は当たり前のことを口にしただけだった。しかし、師匠は首を振っていたんだ。


「実はあのバスターソードはエレナが仕上げをしておる。あとは研ぎを残すだけだ」


 マジ?

 てか、エレナってミスリルを溶かすまで熟練度を上げたのか?


「彼女はミスリルの加工ができるようになったと?」


「もの凄い成長力だぞ? 弟子にして良かったと思う。あの子は女神様に愛されているな」


 女神エルシリア様がエレナを?


 いや、俺の方がエレナを愛しているって。


 とまあ、冗談めいたことを考えていたのだけど、俺は女神様に愛されているという理由を師匠に聞かされていた。


「エレナは何を打っても効果が乗る。加えてスキルまで乗ってしまう。女神様に愛されているとしか思えん」


 確かに効果やスキルについては説明を受けていた。


 だが、俺は一度も乗ったことがない。ただ鍛造するだけだったんだ。


「バスターソードには何が付与されたんでしょうか?」


「効果もスキルも最上級だぞ? 白金貨単位で売れる製品が出来上がっておるわい。効果は切れ味三倍。スキルは使用者の全ステータス倍増だ」


 いや、おかしくね?

 それって誰が使っても、二倍の強さになるってことだろ?


 しかもミスリルという素材にあるポテンシャルを三倍にしてしまうなんて。


「あり得るのですか?」


「現実だからな。国宝に指定されてもおかしくないものだ」


 俺は首を振っていた。


 そもそも俺はエレナのために鍛冶を習っていたんだ。その彼女が既に俺を越えてしまったなんて、俺の修行は意味がなくなっている。


「そう気落ちせんでいい。やはりミスリルを一から打つのは難しい。インゴッドにしたり、鍛造する過程はリオが上だ。この辺りはジョブとスキルが影響しておるな」


 なるほどね。

 エレナは剣聖だし、打撃スキルを持っていない。その点においては俺も役立つってことか。


「いやしかし、エレナは自称天才だったのですけど、本気になると凄いですね。マジで天才だったとは……」


「ふはは! 天賦の才を持っておるわ。まあでも、エレナが上手く打てるのは何も才能だけじゃないぞ?」


 ここで俺は妙な話を聞かされている。

 留守にした期間だけで、鍛冶能力を開花させたエレナ。才能以外に説明できないと思うのだけど。


 ここで俺は思いもしない話を聞かされることに。

 エレナが開花した原因を告げられていた。


「エレナは愛を込めて打つと言っておった」


 思わず涙腺が緩む。

 今朝だけで何度愛していると聞いたか分からない。


 俺が留守にした期間、彼女はミスリルに打ち込みするたび、愛を込めていたのかもしれない。


「果報者だな? ルミアの婿にと考えもしたが、ルミアには勿体ない!」


「お父さん!?」


 どうしてかルミアは取り乱している。しかしながら、俺は二人の遣り取りをまるで聞いていなかった。


 俺のために愛込めて打った大剣。それを仕上げたくて仕方なかったんだ。


「師匠、俺はこのバスターソードを仕上げたい!」


「ああ、準備している。こっちへ来い」


 研ぎ次第で業物もナマクラになると聞く。だから俺は精一杯にバスターソードを研ぐと誓おう。


 それこそ心からの愛を込めて。


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