第177話 お酒の力を
(誘惑しなきゃ……)
リオの隣に座って、お酒を一気飲み。
流石に咽が焼けそう。だけど、酔った勢いが私には必要なのよ。
モニカ曰く童貞は直ぐに日和ってしまう。だから、どこまでも私が誘い続けて、彼が覆い被さってくるのを待つしかありません。
グラスを置き、私はリオの腕に絡みつく。
(胸を押し当てるんだっけ)
割と酔いが回ってきたな。加減が分からないけど、これでいい?
「エエエ、エレナ……?」
リオは動揺している。
やっぱ、これで正解なのね。
私は腕に絡みつくようにして胸を押しつける。
それで、このあとの指示は何だっけ?
「ねぇ、旅はどうだったの……?」
いやいや、これは違う会話だ。
色っぽさの欠片もない。酔っ払ってきた私は見当外れの話をしてしまう。
「大変だったよ。関所で捕まったり、戦争が起きたり」
ここで私はしらふに戻っていた。
え? リオって巡礼の旅に出ただけでしょ?
何なの、そのイベントモリモリの旅は……?
「大丈夫だったの?」
「何とかね。まあそれで俺は無事に戻った功績で戦将軍という役職をいただいた。もうエレナの隣に立っても、見劣りしないよな?」
ああ、リオはそんなこと気にしていたんだ。
確かに男爵家の五男坊であった頃なら、遊び相手でしかなかった。
だけど、今や辺境伯の跡継ぎであって、私の方が全然足りていないのよ。
「充分すぎる。私で良いのかと思っちゃうわ。カッコいいだけじゃなくて、立派すぎるよ。私には勿体ない男性だもの」
「そんなことない! 俺は今も君に釣り合う男になりたいだけだ。まだ英雄じゃないし」
思えば酷い条件を付けてしまったわね。
英雄だなんて漠然としすぎているし、リオには重荷に感じられたことでしょう。
「リオは私の英雄だよ……」
グラスにもう少しだけお酒をついだ。
お酒の力を借りて、私は本心を語っていくだけよ。
嘘偽りない気持ちを伝えてみよう。
「大好きなの。もうリオ以外の男性なんて嫌だ。そんな未来があるのなら、行き遅れたって構わない」
一生独身でも構わない。
相手がリオじゃないのなら、私は伴侶など必要ありません。
私は恥ずかしさのあまり、再びお酒を一気に飲み干す。
「俺だってエレナしかいない。俺もエレナが大好きなんだよ」
とっても嬉しい。私たち両想いだね……。
何とか返事をしたかったけど、もうダメだわ。
酔いが完全に回ってきて、頭が全然回らなくなっている。
「リオぉぉ……」
猛烈な眠気が襲ってきた。
ダメだと分かっているのに、目蓋が重い。
まあでも、ここまでしたのだから、リオはこのあとお楽しみタイムに突入するはずよね。
「もうダメ……」
私はここでベッドへと横たわった。
あとは好きにして。
初めての経験を記憶できないのは悲しかったりするけれど、私はもう限界なのよ。
痛みがある経験だと聞くし、とりあえずリオにお任せしちゃおうか。
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