第175話 夜になったけど……
夜になった。
詰め所の食堂で夕飯を食べてから、俺は勇ましき戦士の嗜みへと向かう。
いや、マジで戦士の顔をしてたんじゃね?
意気込むなと言われていたけれど、俺はこれより戦場へと向かうのだ。エレナとの死闘が待っているはずだからな。
「勇ましきも嗜みも、そっちの意味に感じてしまうな」
看板を見上げては、そんな感想を持つ。
男の嗜みこそ女であり、男は勇ましい姿を見せつけるだけなんだ。
俺は裏口に回って、軽くノックをする。過剰に緊張感を覚えながら。
「リオ?」
中から声がしたので、俺はリオだと返事をする。きっと俺の声は裏返っていたことだろうな。
ガチャリと扉が開かれると、エレナがそこにいたんだ。
滅茶苦茶に可愛い。これから俺はエレナを抱く。美しく着飾った甲斐もなく、全て脱がせてしまうはずだ。
「入って。待ってたのよ?」
やべぇ。鼓動音が聞こえるくらいに心臓が脈打ってんよ。
落ち着こうとは思うけど、妙に色っぽいエレナを見ると気持ちが逸ってしまう。
「エレナ、大好きだ……」
いや、俺って何を口走ってんの?
綺麗だって言いたかったのに、なぜ自己主張的に感情を口にしているのか。
「わわわ、私も好き。大好きよ……」
やっぱ間違いない。
俺たちは両想いであり、これから夜の戦闘を始めるんだ。
エレナに連れられて、俺は二階にある居住スペースへと入っていく。
ヤバいよ。めっちゃ咽が渇く。
緊張しすぎるとこんなことになってしまうのか。
「エレナ、何か飲み物もらっていい? 俺、緊張してしまって……」
「あわわ! 気が付かなくてごめん! わわわ、わたしも咽渇いた……」
エレナも緊張しているんだな。
だけど、急にどうして俺を誘うことにしたんだろう?
テーブルに座って水を入れてもらってから、俺は疑問を口にする。
「エレナ、どうして今日は家に呼んでくれたんだ?」
「ええ!? そそそ、それはその……」
顔を真っ赤にして口籠もるエレナを見る限り、俺が期待するままの用事で呼んだのだと思う。やっぱ、これから俺たちは愛し合うってことだよな。
「リリ、リオが好きだから……」
あかんて……。
破壊力がありすぎて、他の質問が吹っ飛んでしまった。
えっと、俺だって好きだし、これからするってことも理解できたし。
「俺は二ヶ月も会えなくて寂しかったよ」
「私もよ! 側にいたリオがいなくなって、ずっと寂しかった。だから、帰ってきたらって思ってた……」
エレナのドレスは割と胸元が開いている。
前屈みになったエレナの胸元から目が離せねぇよ。
白くて大きくて。想像していたけど凄くいい……。
「エレナ……」
俺は我慢できずに彼女の顎先へと触れ、少しばかり強引に俺の方へと向けた。
「リオ……」
口づけは何度目だろう。
最初の頃とは違って、上手くできたんじゃないか?
やはりテッド師団長様が話していたように、何事も経験なのかもしれない。
俺たちは離れていた時間を取り戻すかのように熱く長い口づけを交わすのだった。
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