第169話 身に余る栄誉を
「俺は黒竜退治を女神様から依頼されております」
俺は女神の使徒。今はまだ力足らずだけど、俺なら黒竜と戦えるって女神エルシリア様は仰っていたんだ。
レイスの件もあるし、俺は黒竜と戦う地位が是非とも欲しかった。
「なんと、それはまことか!? ああいや、どこで女神様が降臨されたというのだ!?」
俄には信じがたい話であったことだろう。
俺だって信じられないのだからな。報告を受けただけの王陛下に消化できるはずもない。
「プロメスタ聖王国の神殿です。あそこは聖地ですから……」
俺はここまでの経緯を説明していた。
ダリア共和国にて捕縛されたことから、エマと共に脱獄したこと。更にはプロメスタ聖王国へ帝国軍が侵攻したことや、敗戦に終わったことまで。
「ぬぅぅ、何ということだろうか。帝国の勇者は結果として、自国を滅ぼしたことになるのか……」
考えようによっては、そうかもしれない。
レイスの一撃によって、黒竜は我を失ったのだ。けれど、それはレイスの意志であったのかもしれない。帝国は酷い契約をレイスと交わしていたのだから。
「陛下、勇者レイスは立派な救世主です。帝国が滅びたのは偶然であり、彼は人族のために戦っただけにすぎません」
俺が会ったのは光の玉でしかなかったけれど、彼は真っ直ぐな考えをしていた。
自身は失われたというのに、やっかむことなく俺に全てを託したんだ。よって、俺は死後に彼が揶揄されるなんて嫌だった。
「そうなのか……?」
「彼は歴とした光の勇者でした。そして俺は彼の意を継ぐ者らしいです。努力の末に勇者へ昇格し、世界を救うようにとエルシリア様は仰っていました」
エルシリア様にどこまで見えているのか分からない。
だけど、俺とエマの邂逅には絶対一枚噛んでいるはずだ。聖女をサポートに付けようとしたのだと俺は疑わない。
「ならばリオ、其方はどうする? 王国騎士団に入るか? 世界救済のためであれば、儂は協力を惜しまん」
「ありがとうございます。ただ俺は今のところ使命を与えられていないのです。そのときが来るまで、好きなように生きろと言われております」
正直なところ、これからのことは何も分からない。
理解できるのは求められる結果だけ。救済案である黒竜の討伐しか判明していないのだ。
「ただし、いざといういとき自由が欲しい。北部の偵察時にいただいたような偽装ではなく、ちゃんとした肩書きが必要です。他国にも周知される権力が欲しいと考えます」
王国軍に入るわけじゃないけれど、王国のお墨付きが必要だ。
行く先々で捕縛されていたのではどうしようもないからな。誰もがひれ伏す肩書きがあれば、俺は行動しやすくなるだろう。
王陛下は考え込んでいる。大臣不在という中では陛下が全てを処理しなくてはならないのだ。
「分かった。リオには近衛騎士となってもらおう。それは王国軍とは別の組織。王家直属の精鋭部隊だ。かといって、割と自由を与えておる。外交や遊説の折りに警護するくらいなもの。それでどうだ?」
聞く限りに、自由があった。
任務も警護だけであれば、俺はその身分を有り難く頂戴したい。
「よろしくお願い致します」
ここで謁見の間に拍手が巻き起こる。
どうやら居合わせた諸侯たちも同意してくれるらしい。俺が国の中枢に入り込むことを許可してくれているようだ。
「ならば、リオ・ウェイル。其方を本日付で近衛騎士団所属とする」
万雷の拍手の中、告げられていく。
俺が得た役職について。
「その階級は将軍――」
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