第168話 しょうがないよな
俺とエマはようやくとアルカネスト王国へと到着していた。
約二ヶ月という旅路。早く休憩したいけど、王様への報告を先に済まさなければならない。
俺とエマは王城へと向かい、王様への謁見を願う。
エマについては保護を頼むつもりなので、彼女も同席することに。
直ぐさま了承され、俺とエマは謁見の間へと通されている。
「リオ、よくぞ戻った。大儀であったな?」
一応は経緯を説明している。
王様は俺が過ごした二ヶ月をそう評していた。
「いえ、エマが協力してくれましたので」
「ほう、その方はエマというのか?」
エマにはずっと下を向いていろと話している。
彼女は歩く不敬罪だ。よって一言も喋らせるわけにはならない。
「それでエマは聖女なんです。元々は帝国に縛られていましたが、現在は契約から逃れられております。王国で匿うことは可能でしょうか?」
俺の嘆願に謁見の間がざわつく。
やっぱ敵対している国の聖女だなんて信用ならないのかもな。
「エマは帝国を嫌っています! 裏切るような真似はしません。もし何かあるのなら、俺が全て責任を持ちますので!」
俺くらいの首で助けられるのか不明だ。しかし、差し出せるものが自分しかないのだから、俺にはこれ以上の話などできない。
返答を待つだけだった。
ところが、陛下は首を振って、俺の話を否定するような感じ。
「王陛下、再考願います!」
「ああいや、そうじゃない。儂は別に其方が連れ帰った聖女を疑っておるわけではないのだ」
あれ? どゆこと?
明らかにエマに不信感を抱いたような反応だったと思うけど。
まあそれで、俺は知らされている。
王様や諸侯たちがエマを不審がらない理由について。
「帝国は既に滅びた……」
えええ!? 何だよそれ?
二ヶ月前は侵攻とかしてたんだぞ?
確かにプロメスタ聖王国には敗れたけれど、どうやって攻め込まれてもいない帝国が滅びるってんだ?
「どういうことでしょうか?」
「うむ、世界情勢は厄介なことになっておるのじゃ」
語られていくのは帝国が滅びる物語だ。
野心を剥き出しにしたヴァルノス帝国が迎えたという結末である。
「黒竜が帝国全土を破壊し尽くした――」
俺は唖然としていた。
いや、早すぎない?
黒竜退治を女神エルシリア様に依頼されたけれど、俺はまだパラディンだし勇者に昇格していない。
エルシリア様はゆっくり成長するようにと話していたし、黒竜が破壊活動を始めるなんて考えもしていなかった。
「それは本当でしょうか?」
「斥候が持ち帰った情報だ。ちなみに我が国の東側も被害を受けておる。帝国は黒竜が暴れ回った中心地であっただけ。運不運でいうのなら、帝国にはツキがなかったのぉ」
マジっすか。
目の上のたんこぶ的な帝国という存在の滅亡。それが戻ってくる短い期間に成されてしまうなんて。
「黒竜はどこに?」
「一人戻った斥候が言うには南へ向かって飛び去ったらしい。どうにも苦しんでいる感じで、正気ではなかったのではと話しておる」
どうやらレイスに与えられた傷が黒竜を暴れさせた原因かもしれない。
散々、暴れ回ったあと黒竜は飛び去ったというのだから、破壊が目的だったとは考えにくいのかもな。
俺は王様に伝えるべきだろう。
黙っていようかと考えたけれど、俺は口にするべきだ。
エルシリア様より与えられた俺の使命について。
「俺は黒竜退治を女神様から依頼されております」
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