第167話 弁明を聞いて!
「リオ、無事じゃったか……」
現れたのはガラムだった。
しかしながら、疑問しかない。どうして王国が進軍して、ガラムが侵攻軍に参加してんだ?
「父上、どういうことです!?」
大勢がいる前だしガラムとは呼べん。俺は既に辺境伯家の一員なのだし。
「ええ!? リオのお父様!?」
面倒なことにエマが話に割り込んでしまう。
彼女は善人だと思うけど、言動が無茶苦茶だからな。
「む? その女性は誰じゃ?」
「父上、この人は聖女エマ。俺は共和国軍に捕らえられていたのですが、彼女と共に脱獄したのです。それ以来、行動を共にしています」
「あたしはエマ! 夜のお世話係です!」
「黙ってろよな!?」
最悪だ。
冗談なのに、弁明する方法がねぇよ。
兵たちはヒソヒソと話をしているし、俺の好感度はガタ落ちじゃないか?
「父上、エマは性に寛容すぎまして……」
「あたし、娼婦してましたから! 得意なんです!」
「ホント、黙れよな!?」
駄目だ。もう絶対に買った女だと思われてるぜ。
悶々としながらも、俺は我慢してここまで来たってのに。
「リオ、とにかく良く戻った。ワシらはこれよりウィンブルクへと侵攻し、共和国議会を占拠する予定じゃ」
「それなら俺も参加します!」
「駄目じゃ。長旅で疲れとるじゃろう? ウィンブルクを陥落させるのに現状でも過剰な戦力じゃて。リオは王都で静養しなさい」
どうやら、勝利は確定的らしい。
ま、ガラムまでいるのだから、圧勝するだろうな。雷氷の大賢者が現れたと知れば、即座に白旗を揚げるってものだぜ。
「分かりました。戻れば色々と話がございます」
「ああ、それの。ワシは妾くらい構わんのじゃが、嬢ちゃんはキレるじゃろうな……」
「その認識は違いますから! エマとは何の関係もありません!」
「あたしの裸を凝視したくせに?」
「下着姿だっ!!」
いやもう、色々と駄目なやつ。
弁解するほど深みに嵌まっている気がするぜ。
上手くエマに操られているのかもしれん。
「嬢ちゃんが首を長くして待っておるわい。急いで王都へ戻れ」
「分かりました。って、本当にエマとは深い関係じゃないですからね!?」
「もうよい。嬢ちゃんに殺されんようにするのじゃぞ?」
これは全然、信じてねぇな。
一応は念を押したけど、兵たちからも生暖かい視線が向けられていた。
最悪だぜ。
どうして俺はそんなにも信頼されてねぇんだろうな。
弁明の機会すら与えられず、俺たちは侵攻軍と別れていく。
一路、王都セントリーフを目指すのであった。
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