第166話 再会
俺とエマは小国が乱立するエリアを抜け、再びダリア共和国へと到着していた。
聖王国を経ってから二週間あまり。
王国を出発したときの計画から実に一ヶ月近くも遅れている。
しかしながら、懸念された関所には誰もいなかった。北側の小国は概ね崩壊していたからか、警備が重要視されていないのかもしれない。
「ま、楽々と入国できるのは悪くない。だけど、王国側の関所には絶対に兵がいると思う」
「リオはそこで掴まったんだってね?」
「偽造登録証だしな。しかし、ジョブを調べたらパラディンだと分かるのに……」
「初めから全員捕まえるつもりだったのよ」
エマの言う通りだ。
ダリア共和国は最初からアルカネスト王国を疑っていた。だからこそ、関所を越える全員を捕縛するつもりだったはず。
「関所は有無を言わせず破壊すっぞ!」
「頼もしいわ! 成功した暁には好きにしてくれていいわよ?」
「るせぇよ……」
ずっとこんな遣り取りだ。
まあしかし、エマがいるだけで楽しかった。実際に彼女と親密な関係になることはなかったけれど、彼女の冗談は俺の気を紛らわせてくれる。
俺たちは街道を南下して、アルカネスト王国を目指した。すると、地平線の先に何やら土煙を発見している。
「おい、あれは侵攻軍じゃないか? まさか共和国は王国に攻め入るつもりなのかも」
「共和国議会はバカじゃないの? アルカネスト王国に勝てるはずもないじゃない」
俺も同じ意見だ。
アヴァロニア世界の二大強国がアルカネスト王国とヴァルノス帝国。その一角に割り込む感じでプロメスタ聖王国があったのだから。
ダリア共和国は国土こそ広かったものの、大部分が荒れ果てた荒野であって、国力は二大強国にまるで及んでいない。
「バフはいらん。突っ切っていくぞ!」
「カッコいい! 後ろについて行くわ!」
エマだけは守ってみせる。まあでも、一般兵なら俺は難なく突破できるだろう。
殲滅を考えたとして、フレイム数発で方がつく感じだし。
「突撃するぞォォッ!」
馬に鞭を入れて、加速していく。
近付くたびに明らかとなるのは眼前の集団が軍隊であることだ。俺は剣を抜いて、一団へと取り付いていく。
「えええ!?」
ところが、俺は馬を急停止させていた。なぜなら、眼前の軍勢は共和国軍ではなかったから。
掲げられた多くの旗印は明確にアルカネスト王国のものだったのだ。
「王国が進軍してんのか?」
「リオ、どういうこと?」
「俺にも分かんねぇよ。とりあえず近付いてみよう」
馬を走らせた俺たちは武器をしまったまま、侵攻軍に接近。流石に槍を向けられてしまうのだが、両手を挙げて敵ではないことを訴えるだけ。
「俺はリオ・ウェイル! 敵じゃない!」
大声で叫ぶと、兵たちが割れた。
一本道のように分かれた兵の隙間。俺を通してくれるという意味合いではないはずだ。
その隙間には一頭の騎馬が歩んでいたから。
「リオ、無事じゃったか……」
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