第165話 新しい学び?
リオの大剣を鍛錬し始めてから、二週間が経過しています。
私は早朝からガラム様に呼び出されていました。
きっとリオが帰ってきたんだわ。
随分と遅れたみたいだけど、スタンピードの影響で街道が滅茶苦茶になっていたせいでしょうね。
喜び勇んで王城へと向かう。
迎えを寄越してくれたので、城門でのチェックすらありませんでした。
「ガラム様!」
魔道士団の詰め所前にガラム様を見つけました。
私は馬車を飛び降り、彼の元へと駆けていく。
「リオはどこです!?」
いや、私は何を考えているのでしょうね。
辺境伯様にお会いしたというのに、挨拶もろくに交わさないなんて。
「嬢ちゃん、待っておったのじゃ。ワシはこれからしばらく留守にするでの。リオが戻ったなら、伝えて欲しいことがあったんじゃ」
「ええ? リオってまだ戻っていないのですか!?」
嘘でしょ?
一ヶ月くらいと聞いていたのに、もう二ヶ月が経過しようとしています。
リオなら下手なことにはならないと思いますが、それでも心配になってしまう。
「どうやらリオは関所で捕まったようなのじゃ。ダリア共和国から宣戦布告を受けた折りに、リオの登録証が送りつけられたのじゃよ」
「嘘でしょ!?」
気が動転してしまう。
リオが共和国に捕らえられたなんて。
「リオは無事なのですか!?」
「リオなら殺されるようなことにはなるまい。脱獄くらい容易いじゃろうて。ただ馬は没収されておるはずじゃ。徒歩にて戻ってくるじゃろう」
確かにリオの実力であれば、みすみす断罪処分を受けるような事態は考えられない。
だけど、彼は優しいのよ。他者を殺めてまで脱獄してくれるのか分からない。
「ガラム様はリオを迎えに行かれるのでしょうか?」
「いや、共和国軍が国境に近付いておるらしくての。我らは騎士団と共に進軍する。そのまま首都ウィンブルクへと侵攻する予定じゃ。リオが捕らえられたままであれば、必ず助け出す」
「私もご一緒します!」
これでも私は剣聖だもの。きっと役に立つはずだわ。
ところが、私の申し出にガラム様は首を振った。
「必要ないのじゃ。共和国など広いだけの小国。我らだけで充分じゃ。嬢ちゃんはリオが戻ったなら、進軍の話を伝えてくれ。あやつが参戦してはワシの戦果がなくなるからの?」
ワハハと笑うガラム様に少しばかり安心しました。
確かにガラム様まで侵攻軍に参加するのなら、共和国軍に勝算などないのかもしれない。
「待つだけとか、一番嫌な指示です……」
「そういうな。しかし、残った者にも使命はある。多くの騎士が出兵するのじゃ。魔物被害や他国の侵攻可能性はゼロじゃない。もしものときには残った者が力を合わせて戦うのじゃぞ?」
そうか。残された者にも重大な使命があるんだ。
戦いに赴く兵士たちが戻る場所を守るってこと。それって何だか甲斐甲斐しく夫の帰りを待つ妻みたい。
私はリオが帰る場所を守らなきゃいけないってことね。
「分かりました。私は王都でリオの帰りを待っています!」
「頼んだぞ? それでリオには少しくらい発破をかけてやってくれ。どうにも奥手でかなわん。少しくらい遊んでも良い年頃なんじゃがな」
「遊び回るリオは嫌いです。私だけを見て欲しいわ」
私はガラム様相手に何を口走っているのかしら。
スラスラと口を衝いた言葉は思い返すと恥ずかしすぎる内容でした。
「まあそうじゃの。なら嬢ちゃんは一歩踏み込んでやってくれんか? リオは嬢ちゃんのことを気に入っておるのでな」
私は思いがけぬ話を聞かされていました。
いいの?
私は伯爵家の三女だけど?
辺境伯様はそれで良いのかしら?
「ガラム様、リオには良い縁談があるのではないでしょうか?」
聞かずにいられない。現状で辺境伯様に気に入られるのは凄く嬉しいけど、本来なら私は妾的な身分でしかないから。
「リオは王女殿下の婚姻申し込みすら断ったんじゃぞ? あやつは嬢ちゃんしか見ておらん。それにワシも愛のない結婚を推し進めるつもりはない。両親に愛がなければ、子が可哀相じゃからな」
そういうことか。
確かに両親が立場的な結婚をしていたのなら、子供は愛を知ることなく成長するでしょう。貴族界にはよくある話ですが、ガラム様はそれを良いとは感じていないみたい。
「じゃあ、私はリオを愛すると誓います!」
お父様にも既成事実を伝えちゃったし、そもそも私は一夜限りの関係を許可していたんだ。
今さらリオに出し惜しみするなんてバカみたいだもの。
「そうしてやってくれ。きっとリオは疲れて帰ってくる。癒やしとなってくれたのならワシは嬉しいぞ」
私がリオの癒し……?
それって、やはりアレでコレして癒やすって事よね?
もしくはコレがアレして妊娠しちゃうやつ。
やだ、やり方が分からないわ!
リオも未経験みたいだし、大惨事は避けられないじゃないの!?
「ちょうど、良い先生がいるのですよ! リオが戻ってくるまでに完璧にしておきます!」
「う、うむ……?」
何だかガラム様の反応が良く分からないけど、私は自分にできることをするだけよ。
子供の作り方をモニカに教えてもらわないと!
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