表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/232

第157話 悲しき面会

「勇者は死んだ……」


 俺は呆然としつつも、横目でエマの様子を窺う。


 予想通りではあったのだけど、彼女は言葉を失っていた。


「処刑したわけではないのですよね?」


 エマに代わって聞く。捕縛された勇者がどういった最後を遂げたのか。


「神託によると、勇者が聖王国を救うとのことだった。エルシリア様が仰った通りに、我らは勇者レイスを取り囲んで言葉を投げたんだ。そうすることで彼は無抵抗にて捕縛されるだろうと」


「いや、勇者は帝国を裏切ったのでしょうか?」


「そういうわけではない。既に帝国軍は壊滅していた。我らはエルシリア様のお告げ通りに、降伏するよう説得しただけなのだ」


 もしかするとレイスの悪魔契約も出兵と同時に破棄されていたのかもしれない。


 しかし、理解できなかった。

 女神エルシリアはどうやってレイスを従わせたのか。レイスには契約の破棄が分からなかったはずなのに。


「何を言ったというの!?」


 エマが返答を急かす。彼女は真相を知りたがっていた。


「エマという女性に会いたくはないかと……」


 唖然として声を失ってしまう。

 とても世界を導く光の女神が立てた作戦とは思えなかったんだ。


 しかし、効果的であったことだろう。レイスとエマは愛し合っていたのだから。


「エルシリア様の指示通りに牢獄へと入ってもらった。割と疲れた様子だったな」


 そりゃあ戦争をしたのだし。疲れない方がどうかしているってものだ。


「牢獄に閉じ込めると言って、彼は信用したのか?」


「そこでエマという女性に会えると伝えただけだ」


「いや、それは嘘だろう!? エマは現れなかったはずだ!」


 エマは俺と一緒だった。たとえ女神エルシリアが全能神であろうとも、不可能な話だと思える。


「いや、全て神託通りになった。勇者の骸はエルシリア様の指示通りに保存されている」


 エマとレイスが会っただと?

 そんなはずは絶対にない。俺たちは片時も離れていないというのに。


 訝しむ俺に僧兵は言った。どういった形で二人が面会を果たしたのか。


「後ろの彼女がエマだろう?」


 俺はゴクリと生唾を呑み込んでいた。


 俺の予想が真相であれば、女神エルシリアは詐欺師も同然じゃないか。


「それが……面会だというの?」


 ポツリとエマが問うと、僧兵は申し訳なさそうに頷きを返す。


 まさかレイスも死後の話だとは考えていなかっただろう。しかし、女神エルシリアの神託は全て現実となったらしい。


 亡骸であろうとも、レイスはエマとの面会を果たすのだから。


「連れて行ってくれる?」


「もちろん。そこまでがエルシリア様のご神託だからな……」


 ついてこいと僧兵。聞けば彼は僧兵長という立場のようで、神託に従い街の西側で復興作業をしていたらしい。


 俺たちは破壊された神殿へと連れられていた。

 見るも無惨な状態。しかしながら、どこか神聖な空気を感じることができた。


「ここが神殿だ。あの棺に勇者が眠っている」


「レイス!?」


 馬を飛び降りたエマが棺に駆け寄っていく。

 俺はただ視線を逸らすことしかできない。彼女の想いを知っていたから。


 不意に視界が目映く輝き始める。どういった現象なのか理解できなかったけれど、僧兵長には思い当たる節があったようだ。


 そして彼は告げる。何が起きようとしているのかを。


「これよりエルシリア様が顕現なされる……」


本作はネット小説大賞に応募中です!

気に入ってもらえましたら、ブックマークと★評価いただけますと嬉しいです!

どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ