第155話 関所へ
ようやく俺たちはプロメスタ聖王国に到着していた。
ダリア共和国を後にしてから、実に二十日が過ぎた頃。早くベッドで休みたいと身体が訴えている。
問題は入国審査だった。俺たちは二人とも身分証を取り上げられているんだ。
ちゃんとした神具によって調べてもらわなければ、ダリア共和国と同じ結果になるのは明らかである。
「最悪の場合は逃げるっきゃねぇな」
馬から降りることなく、関所へと近付いていく。
「あれ? 誰もいないじゃないか?」
かなり焦っていた俺なのだが、関所には一人も僧兵がいない。ダリア共和国とは違って、立派な関所であったというのに。
「リオ、恐らく戦争が始まってる。というより、聖王国が負けたのかもしれない」
エマが現状の考察を述べる。
確かに、勇者レイス率いるヴァルノス帝国軍が攻めたと聞いていた。
関所がもぬけの殻であることはエマの推論を肯定しているのかもしれない。
「どうするの? 帝国に占拠されていたのでは巡礼どころじゃないと思うけど?」
「いや、確認する。それが俺の任務だし……」
近付けるだけ近付いてみる。帝国兵の姿が確認できた時点で逃亡すればいいだけだ。
「あたしはリオに従う。どこまでも付き合ってあげるわ」
自己評価の低いエマらしい返答だが、俺にとっては有り難い。
やはり一人きりなのは怖かったんだ。既に戦えることを自覚しているけれど、話し相手が欲しい。精神が弱らぬように勇気付けて欲しかった。
「助かる。君がいてくれて良かった」
「ずっとしがみついているからね? 柔らかいでしょ?」
「そそ、そんなのじゃないって!」
「リオは本当にムッツリねぇ……」
ちくしょう、前言撤回だ。
からかいさえなければ、エマは同行者として相応しいってのに。
「ここからホーリブライトまでどれくらいだ?」
「あたしのバストサイズくらいかな?」
デカいってのは分かるけど、滅茶苦茶遠いってこと?
てか、童貞に巨乳の距離換算とかさせんじゃねぇよ。
「真面目に答えろって」
「丸一日はかかるんじゃない? あたしも聖王国の西端は任務外だったし。地図で見た限りでは近くないと思う」
からかいが続くのかと思えば、エマは真面目に返してくれた。
もっとも彼女自身もこのエリアは任務外だったらしく、詳しくはないみたいだ。
「しっかし、早く湯浴みでもしたいわねぇ。リオが臭くって仕方ないわ」
「俺かよ? お互い様だろうが……」
「リオだけだって。あたしはいつもお花の香りよ? 嗅いでみる?」
「からかうなって言ってんだろ」
隙あらばこの展開なんだ。まあしかし、この遣り取りが割と心に余裕を与えてもいた。
俺は一人じゃない。
仲間がいるのだと。
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