第151話 脱出前に
着替えが済んだのかと思えば、エマは法衣を脱いだだけであった。
どうして着替え途中に話しかける? 下着姿とか見せるんじゃねぇよ。
「あらら、赤くなったぁ。本当にウブなのね?」
「早く着替えろ。さっさとウィンブルクを脱出するぞ」
「もっと見ていいのよ? さっきはカッコ良かったからサービスしてるの。何ならヤる?」
「しないって! ほら、後ろ向いてるから……」
てか、鎧を装備するのに肌着まで脱ぐなっての。絶対にエマは俺をからかって楽しんでいるんだ。
「こんなものでどう? あたしの美貌が台無しだけどさ」
「んなもん気にすんな。でも割と良いサイズがあったんだな?」
「そうでもないよ? 胸の辺りがキツい……」
うっ……。
先ほどの記憶を思い出しちまったじゃないかよ。
まあ確かに大きかった。たぶんエレナよりも、ずっとデカい。
「知らん。マスクは深く被っておけ。堂々と歩いて行くぞ?」
「ほう、女以外なら度胸が据わってるんだ?」
「るせぇよ。さっさと先導しろ。俺は土地勘がゼロだからな」
俺が急かすと、エマは頷く。一応は俺が扉を開くわけだが、問題は何もなかった。
俺たちのいた牢獄は割と大きなストリートに直結しており、そこにはダリア共和国の民衆たちがいるだけである。
「こっちよ……」
外の様子に安心したのか、エマが先を行く。
ぶっちゃけ、兵士としては小柄すぎる彼女であったが、道を行く人々は俺たちのことなど気にしていない感じだ。
歩くこと三十分ばかり。俺たちは割と寂れた通りへと来ていた。
そこは完全にスラム地域。こんなところに馬を隠して無事であるとは思えないのだけどな。
「ここよ。アンロック!」
どうやらエマは施錠魔法まで使えるようだ。
戦闘能力こそなかったけれど、やはり上位ジョブ。なかなか優秀なサポートだと感じる。
「まだ生きてたわ! ハイヒール!」
馬にヒールが効くのか不明だけど、躊躇うことなく唱えたのだから効果があるのだろう。
「リオが前? それとも後ろ?」
馬は一頭だけだ。まあ、エマが一人で逃げるために買ったんだもんな。二頭いるはずもないか。
「相乗りは目立つ。一気に駆け抜けるしかない。ここから一番近い街門まで誘導してくれ」
「てことはリオが前ね?」
「当たり前だろう? エマは戦えないのだし」
俺は奪ってきた長槍をマジックバックから取り出していた。
槍なんて手に取った経験すらなかったけれど、長剣では足下の敵を倒せないのだ。
「カッコいいわぁ。ホント素敵よ?」
「黙れよ。それで俺はこのあとプロメスタ聖王国へ行かなきゃいけない。もっとも、それは誤魔化すための目的地だけど」
俺の任務は北にある小国の状況を確認することだった。だが、現状はかなり東まで来てしまったし、北上をしてプロメスタ聖王国に向かおうと思う。パラディンと聖女であれば、きっと協力を願えるはずだろうと。
「えっ? 聖王国?」
「何か問題でもあるのか?」
「ああいや、意外な目的地だなぁって! それなら北街門を抜けましょう。どうせ追っ手がくるのだし、目的地に近い方が良いわ」
「了解。後ろから指示してくれ」
とりあえず、このあとの行動も決定した。あとは駆け抜けていくだけだ。
戦闘になったとして、俺はもう容赦などしないからな……。
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