表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

148/232

第148話 牢獄をあとにして

 地下四階。まだ記憶に新しい通路を俺たち二人は歩いている。


「兵には気付かれなかったみたいね。ま、溶かしただけだし、上階まで響かなかった感じかしら」


 衛兵が駆け付ける感じはない。


 エマが話すように牢獄は溶けただけ。破壊した物音がなかったのは幸いであった。


「それでリオ、兵を倒すのにも、アタックエイドがいらないっての?」


「今のを見ただろ? あの倍になるなんて、一般人を巻き込んでしまう」


「優しいのね? そんな優しさが欲しかったわ……」


「悲しいこと言うな。勇者レイスは優しくなかったのか?」


 聞いた直後に俺は失言だったと気付く。

 もう彼女の恋人はいないのだという。なのに、思い出すような話をしてしまったのだ。


「彼だけよ。あたしに優しくしてくれたのは……。あたしは幼い頃から悪いことばかりしてたからね。お金が欲しかった。自由を手に入れたかった。優しさなんてものの優先順位は低かったのよ」


 そういうことか。スラムでの生活は本当に厳しいのだろうな。


 貧乏貴族でも俺の生い立ちはずっと恵まれている。エマがしてきた苦労の半分にも達していないことだろう。


「悪いことってなに?」


「聞きたい? 抱いてくれたら教えてあげるわ」


「ああいや、いい……」


 何となく分かるし。スラムでする悪事など窃盗や売春と相場が決まっているからな。


 俺をそちら側に巻き込みたいのか、エマは抱いたあとでなら教えてくれるという。


「本当にガツガツしてないのね? 何だか女として自信喪失になりそ」


「君は綺麗で素敵だと思うよ。傷心を俺で解消しようとしなければだけど……」


「癒してくれてもよくない? あたしは一人で生きるのに疲れてしまった」


 まあ、それな。

 恋人に依存する理由は俺にも分かる。俺だってエレナが全てなんだ。もしも彼女を失ってしまったのなら、俺は自暴自棄になってしまうだろう。


「悪いけど、本当に俺は意気地なしの童貞なんだよ」


「ふふ、ホントね? 今までに出会ったことのないタイプだわ」


 俺たちは笑い合っていた。

 エマの性癖にはドン引きなんだが、まあそれでも良い奴だ。


 どこまで一緒に居るのかは決めていないけれど、帝国から逃げたいというのであれば、手を貸すことくらいできる。


 俺は割とお金を貯めているし、それが彼女の助けになるのなら出し惜しみはしない。


 エマがいなければ、俺は今もあの牢獄で食事の配膳を待っていたのだから。


本作はネット小説大賞に応募中です!

気に入ってもらえましたら、ブックマークと★評価いただけますと嬉しいです!

どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ