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第141話 奴隷契約

「もう彼氏は死んだはずよ……」


 あ、禁句だったのか?

 美人な彼女のことだから、彼氏がいると思っていたんだ。従って執拗に誘う彼女に俺は苛立っただけ。


「すまん。共和国の連中に殺されたのか?」


「いいえ、殺したのは皇帝。戦争に行けと命じられた。きっとレイスは矢面に立たされ、味方の被害を最小限とするために使われる。帝国が勝ったとして、レイスは死んでいるはずだわ」


「断れなかったのかよ? 絶対服従ってやつ?」


「そういうこと。聖地を手に入れたなら、世界征服の大義名分が手に入るらしい。思想の統一という意味不明な理由みたいね。帝国は勇者レイスを持て余していたからさ、有意義な使い方だったってこと」


 エマの彼氏は勇者レイス。聞けば二人は幼馴染みであったらしく、ずっと一緒に生きてきたという。


「あたしは帝国を滅ぼしたい。復讐を果たすまで死ぬわけにはならないのよ」


「いやでも、絶対服従の契約があるだろう?」


「だから、リオの力が欲しい。対価はあたしの身体。もう愛した人はいないの。あたしの望みを叶えてくれるなら、本当に好きにしてくれて構わない」


 悲しいこというんじゃねぇよ。


 ますます抱きたくなくなったっての。俺は悲運な背景を知ったあとで楽しめるほどクソ野郎じゃない。


「まあ分かった。脱出してからのことを考えよう。俺には土地勘がない。直ぐに捕まってしまっては意味がないからな」


「下調べしているから問題ないわ。街外れに馬を隠している。馬で駆けて街門を強行突破するだけ」


 作戦は分かったけど、意味が分からん。端折らないで説明してくれないと、俺は納得できないぞ。


「待て、お前らはウィンブルクの街中で捕まったのかよ?」


 俺みたいに関所で捕まったと思ってたけど、既に入り込んでいたのなら、何が目的だったんだ?


「レイスとは別の任務。プロメスタ聖王国を陥落させたあと、帝国はダリア共和国へと攻め入るつもりらしいわ。ただの敵情視察よ……」


 アルカネスト王国が得ていた情報通りだ。やはりヴァルノス帝国は戦争を始めるつもりだったらしい。


「あたしたちはダリア共和国の戦力分析をするために、ウィンブルクに侵入していたのよ。だけど、泳がされていたみたい。偽物の身分証はバレて、アジトが一網打尽ってわけ。逃走用の馬はあたしが個人的に買ったもの。部隊の誰もそのことは知らない」


「エマだけが逃げるつもりだった?」


「そうじゃないわ。あたしは信用していないだけ。帝国兵なんて、隙あらば襲ってくるようなゴミだからね……」


 辛い話を聞いちまったな。

 せっかく聖女というジョブを授かったというのに、これでは授からない方がマシとまで考えられる。


「あたしにあいつらを助ける義理はない。もう契約違反も気にする必要はないし」


「どうしてだ? どこまでも縛られているんじゃないのか?」


「説明は難しいのだけど、悪魔契約は普通の奴隷とは違うのよ。普通の奴隷は女神の名の下に成される。奴隷は主人に忠実であることを求められるの。しかし、命まで懸ける必要はない。女神は奴隷の拒否権を認めているから」


 奴隷契約は命令違反を犯しても苦しむだけ。最低な契約だけど、女神様は奴隷たちにも権利を与えているようだ。


「対して、あたしたちの契約は悪魔を介するもの。悪魔は常に対価を要求する。命令するごとに術者の寿命が削られていくのよ。従って、多くの命令を一度に科すなんてできない」


 恐らく、その契約は禁忌と呼ばれるものだろう。術者の命が対価だなんて。


「それだけじゃない。絶対服従させるには生け贄が必要となるから……」


 俺は帝国を甘く見ていたのかもしれない。


 告げられた話はとても看過できるものではなかったんだ。


「契約の維持には健全な贄を毎日捧げなくてはならない」


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