第138話 ルームシェア
馬車が停車したのは三回目の朝日が昇った頃であった。
「そういや、俺の馬はどうなったんだ?」
マジックバックこそ奪われなかったが、国境まで乗ってきた馬はどうなってしまったのか不明だ。馬は金になるし、売り払われていたとしても不思議ではなかったけど。
「降りろ。収監する」
どこだか分からない。しかし、着いた先は大きな街であった。
恐らくはダリア共和国の首都ウィンブルクであるのだろう。
兵に連れられた先は、何やら古びた建物だった。その地下深く。四階ほど降りた先にある牢屋へと俺は放り込まれている。
「マジか……」
王国で確認した地図によると、共和国の首都ウィンブルクは俺の進行ルートになかった。
共和国のかなり東側に位置したはず。王国というよりヴァルノス帝国側にあったと記憶している。
「マズいな。大幅に遅れてしまうじゃないか」
一ヶ月以内に戻らなければ、王国は行動を起こすかもしれない。
戦争なんて真っ平ごめんだ。俺は何とかして穏便にここを抜け出すしかない。
「落ち着いてるのね?」
牢屋で考え込んでいると、俺は声をかけられていた。だだっ広い牢屋には、どうやら先客がいたらしい。
「誰だ?」
「貴方こそ誰? この厳戒態勢の中で共和国に入ろうとしたのでしょ? お馬鹿さんにも程があるわね?」
悪かったな。
てか、そのお馬鹿さんは国王様なんだけどな。一応は兵を使うことなく、顔の割れていない俺を送り込んでいたけれど。
「俺はリオ。巡礼の旅をしていたら捕まった。ジョブの判定すらしてくれないんだ」
「当たり前よ。再びスタンピードが起きることを恐れているからね。共和国は人為的なものだと考えているのだから、国賓級でもない限りは誰も国境を通過できないわ」
なるほどね。国際的な大物でないと、あの検問所は通過できないってか。
疑わしきものは罰する。意味のない検査だったってわけね。
「お前は誰なんだ? 女が一人で捕らえられてるって、俺と同じお馬鹿さんってことだろ?」
「仲間は別の牢へと入れられたの。この牢獄はあたしだけのVIPルームだったのに。女が一人しかいない牢獄に放り込まれるなんて、リオは幸運の持ち主かもね?」
「ざけんな。手枷をされてんのに、何もできねぇよ」
「それはあたしが抵抗した場合でしょ? ヤってみる?」
何だ、この女は? 俺がヘタレだと分かっていってんの?
「るせぇよ。てか、お前は誰なんだ?」
十二分にヘタレである俺は話題を変えていた。
まあそれで、話題転換の意味合いしかなかった問いなんだけど、俺は彼女が何者かを知ることに。
なぜに牢獄へ入れられたのか分からない話を俺は聞かされていたんだ。
「あたしは聖女エマよ――」
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