第134話 旅立ち
エレナと二度もキスしてしまった。
告白をして、ほぼ承諾されたんだ。こんなに嬉しいことは人生で初めてかもしれない。
好きな人が振り向いてくれるなんてさ。
「じゃあ、行ってくるよ」
「気を付けてね?」
無理矢理にキスしたあともエレナは笑顔だった。
やっぱ両想いじゃないか?
戻ってきたら俺、結婚するんだ。
微妙なフラグを立てつつも、俺は王城を目指した。
「あれ?」
まだ指定された時間にはなっていなかったというのに、既にガラムが待っていた。
「早いじゃん?」
「ああ、まずはこれに着替えるのじゃ」
手渡されたのは仰々しいローブだった。
奇しくも、それは聖地母神教会のもの。何の因果か、俺は王都に来た目的をここで遂げてしまう。
建物の影でサッと着替えてみる。
寸法はバッチリだ。どこからどう見ても、俺は神職者になっていた。
「ほう、なかなか立派になったの?」
「これ本物なのか?」
「当たり前じゃろ? 疑われては元も子もない。それでこれが聖地母神教会の登録証じゃ。なくすんじゃないぞ?」
いよいよ俺は知らされている。この任務は重大なのだと。
教会を巻き込んでまで成さねばならない。どれだけ金を積んだのか、王陛下は完璧な偽装工作を施していた。
「このマジックバッグには武器とポーション類、食糧が詰め込まれておる。以前のマジックポーチと比較して容量は十倍。しかも、登録者以外は中身を確認できん。盗まれたとして悪用されることはないのじゃ。それは王都に巨大な邸宅が何軒も建てられるほど価値があるもの。無事に戻った際にはリオの所有物にしていいらしいぞ?」
マジっすか。
他にも褒美がもらえるらしいし、ただならぬ任務であるのだろうな。きっと今回の偵察次第では大事になるのかもしれない。
「気を付けていくのじゃぞ?」
「俺は絶対に死にたくない理由ができたんだ。ゾンビになってでも戻ってくるさ」
「聖職者なのに不吉なことをいうんじゃない」
俺たちは笑い合っていた。
とにかく出発だ。まだ北街道の消化活動が少し残っているし、今日中に王国から出られるように作業しなければならない。
「じゃあ、行ってくる」
俺は馬に跨がって、街門を目指した。
見送りはガラムのみ。だけど、俺はやる気に満ちていたんだ。
エレナが待っていると言ってくれたのだから。
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